オニグルミ
暮らしとの関わり
 石黒では「クルミ」と呼び、食材として欠かせないものであった。どこの家でも秋には実を拾って保存しておいた。〔下写真〕とくに和え物料理に使われた。
 果皮のついた実は、軒下におくと自然に果皮が腐って堅い種子が現れた。殻を割るときには囲炉裏の中に入れて温めるとに先端に割れ目ができるので、そこに小刀を差し込んでこねるようにして割った。
 子どもたちは、割った殻を両手に持ちこすり合わせ蛙の鳴き声そっくりの音を出して遊んだ。
 また、種子の中身を取り出した殻を囲炉裏の火の中に入れるとヒューヒューと音を立てて燃えたこともよく覚えている。
 ところで、縄文時代にはクルミはクリと並ぶ重要な食料であったといわれている。縄文中期以後の集落のまわりには栗林とともにクルミ林が広がっていたのではないだろうか。竪穴住居の中では中央の炉を囲んで家族が集い子どもがクルミの殻をこすり合せてカエルの鳴き声に似た音を出して私の子ども時代と同様に楽しんでいたに違いない。
参考資料−高柳町の縄文遺跡と位置
 今年(2009)は、百年に一度といわれるほど小雪であったためか、4月の27日にすでにオニグルミの花がたくさんついていた。例年に比べて一か月ほど早いことになる。(右下写真)
 今朝(2012.8.20)、市街地周辺でアメリカシロヒトリに全ての葉を食い尽くされたオニグルミの木に出会った。逆光の中あたかも満開の桜のように見えた。近づいてよく見ると葉脈を残してすべて食べつくしている。おそらく中齢幼虫による仕業であろう。→参考写真
 今日(2012.8.31)、荒浜海岸に海浜植物を撮影に行く途中、鯖石川河口近くのゴミの中に10pほどのオニグルミのたくさんの幼苗が見られた。この中には石黒から流れ着いた種子もあるかも、と想いながら植物の種子散布における流水の働きに目を見張る思いであった。
 だが、よく考えてみるとこれらのすべてが鯖石川上流から流れ着いたものとは限らない。鵜川河口や他の河口から海に流れ込んだものが波によって鯖石川河口に送り込まれたもの、またその逆もあるに違いない。(下写真)
 いずれにせよ、市街地に生まれ育った者はオニグルミは海岸で拾うものと思い込んでいることも珍しくないようだ。
 また、オニグルミはリスの大好物らしい。筆者の生家の庭の周りにはオニグルミの木は今はないが、訪れるたびに庭石の上にクルミの殻を見かける。初めは、誰がこんなところに置いたのか、と不思議に思ったがどうやらリスの仕業らしい。それも、オニグルミの熟す秋だけのことではないので、どこかに秋のうちに保存しておくのであろうか。木の又などにオニグルミの実を見た記憶がある(左写真)。また、石の上に置くのは半分の殻だけのことが多い。あと半分はどうしたのだろう。今考えると不思議に思う。接合部分をかじって割れるときに地上に落ちてしまうのだろうか。
 小屋の中からガラス戸越しに庭を眺めていると時々エゾリスの姿を見かける。警戒心が非常に強く、撮影するチャンスに恵まれたことはない。右下の実生の写真も庭に生えたものである。これもリスの仕業であろうか。

(写真上2004.7.8落合 右上左2005.5.8 右上右2005.6.18上石黒 右中2005.7.5下石黒 右下2005.10.11落合 )

資料→クルミひろい


             花をつけたオニグルミ

撮影 2012.5.8板畑

            葉芽と花芽と葉痕

撮影 2015.4.4中浜鵜川沿い

           雌花(上)と雄花(下)

   撮影 2011.5.21下石黒

           葉とともにつく花

撮影 2009.4.30上石黒の小岩峠 背景は蛇岩

                花期-1

撮影 2009.5.18寄合
                花期-2

  撮影 2011..5.19上石黒

               葉と果実の様子

撮影 2011..5.3上石黒

撮影 2009.6.29上石黒

撮影 2010.6.29上石黒

       果実をつけたオニグルミ

撮影日2005.8.25上石黒

     オニグルミの果実

撮影日2007.10下石黒 大橋サエさん採取

      実生の種子の部分拡大画像

撮影日2009.6.15下石黒

  鯖石川河口に流れ着いて発芽したオニグルミ

撮影日2012.8.31松波町

解 説
クルミ科
 北海道から九州の山野の川沿いに多く見られる落葉高木雌雄同株
 高さ25m、径1mにも達する。若枝には蜜に細かな毛がある。
 葉は奇数羽状複葉で小葉は9〜15枚。小葉の長さ8〜12p、幅3〜4p。
 花は5〜6月に咲く。雄花は前年の葉の付け根に付き、ほぼ同時に開く。(葉痕は羊の顔の形で有名)雌花は新枝の先端に付き色は赤い。〔下写真〕受粉は風媒による。
 果実(偽果)は長さ約3cmで、9〜10月に熟す。固いの中の種子は食用となる。また、リスや野ネズミなどの動物の餌となる。
 果皮にはタンニンが含まきつはれ、その液汁は黒色の染料になる(下写真)
 名前の由来は、ヒメグルミに対して表面が凸凹で醜いことによる。



    オニグルミの幹

撮影日2005.7.5落合

      幹の断面
撮影日2011.7.21下石黒

     雄花が先につく


撮影 2009.4.27下石黒

      花粉拡大

        雌花-1


撮影 2011.5.3下石黒

      雌花−2
撮影 2011.5.21下石黒


    雌花から幼果へ

 撮影 2005.6.12下石黒

撮影 2010.6.24下石黒
 撮影 2005.7.4下石黒

   オニグルミの種子の殻

 撮影日2006.1018下石黒

     実生と種子

 撮影日2009.6.15下石黒


       前年の葉痕 撮影日2010.2.18下石黒

      冬芽と葉痕
 写真2015.1.26藤井

   冬芽と葉痕-2
 写真2015.5.9上石黒嶺坂

   芽吹きはじまる-1

 写真2015.3.28畔屋

   芽吹きはじまる-2

 写真2015.4.4中浜
 

  海岸に生えるオニグルミ

撮影日2012.8.31松波町

    果皮の汁で染めた糸

大橋美恵子さん 下石黒