クルミひろい
                        田辺雄二
 8月も終わり、朝夕涼しさを感じる頃になりますと、我が家の前の道端にクルミが落ちていました。しかし、この時分には、まだ十分に実が熟していませんので拾うことはしません。
 それから、しばらく経ちますと果実の皮が黒くなって腐れはじめ、地面に落ちると自然に皮がはがれるのでした。このころになると落ちた実を拾ってくるのでした。 だが、このころのクルミを拾うのは人間だけでなくリスが口の中や両手に持って運ぶのです。 冬眠をしないリスは冬の食べ物として蓄えるのでしょう。
 私もリスに持ち去られないうちに朝早く行って拾ってくることにしています。まだ、皮(果肉)がはがれていないものも袋の中に入れて3、4日起きますと洗うときに大変楽です。 しかし、クルミの表面は凸凹があるので何度も洗い流さなければきれいになりません。
 洗い終わったものはよく乾燥させて袋に詰めて保存します。
 食べる時には、昔は地炉(囲炉裏)の熱い灰の中にいれかき回していますとクルミの実の合わせ目のところが少し開きますので鉈の刃で割り、中身(胚の部分)を畳針穿り出しました。

 それをすり鉢ですり、あえ物などに使うと香ばしくてとてもおいしいものでした。
 囲炉裏のない現在では、電子レンジの中に20個ほど入れて5分ぐらいで合わせ目が開くので便利です。また、現在では二つに割るための便利な道具もあり簡単に割ることができます。
                    (居谷在住)