スミレ
暮らしとの関わり
 広義の意味でのスミレは、子どもの頃からよく見た野草で、ふるさと石黒でも種類は多いが、オオバキスミレスミレサイシンナガハシスミレの外は見分けることが出来ないまま今日に至った。
 スミレの仲間は多く、筆者愛用の牧野植物図鑑(平成1年版)では15頁にわたり、60種が掲載されている。
 今までに、本種らしい個体には多数出会ったが、同定することなく今日に至った。そこには、「スミレの同定は面倒くさい」という横着心があった。
 今日(2019.4.30)自宅前の国道8号線の歩道を歩いていると、縁石の隙間に一列に並んで紫色のスミレの花が咲いていた。その後、何度か観察してこれが狭義の「スミレ」であると同定し、この度掲載したというわけである。
 そして、3年後の今日(2022.10.14)自宅前の国道8号線の歩道を歩いていると3年前と同じ場所で、閉鎖花をつけ種子散布しているスミレに出会った。しかし、花は一個も見当たらない。すべて閉鎖花である。
 閉鎖花は種子散布の終わったものか、未だこれからのものかのどちらかばかりで、さく果の中の種子が顕わになったものはほとんどなかった。そこで、花柄を抜き取って自宅に持ち帰りコーヒーカップに差して観察撮影をしたのが下の写真である。
 種子を拡大顕微鏡でみると、アリの好む物質(エライオソーム)が見られる(右下写真)。アリは種子を巣まで運びエライオソームを食べた後の種子は巣穴の外に捨てる。そこで、種子は発芽の場所を得るというわけである。
 ところで、WEB上の情報によれば、スミレの葉や花は山菜として利用できるが、種により有毒なもの(ニオイスミレ等)もあるので注意を要するとのことである。

写真2019.4.30-(平成の最終日) 松美町


              花期
写真2019.4.30松美町

                草姿
写真2019.4.30松美町

              果実期へ
写真2019.5.7松美町

         秋に閉鎖花を付けた個体
写真2022.10.14松美町

写真2022.10.14松美町

             閉鎖花の種子

 写真2022.10.14松美町


              茶色の根

 
写真2013.4.16 下石黒


解 説
スミレ科
 道端の日当たりの良い所に生える多年草。高さは7〜11pほど。 根は茶色。(左下写真)
 葉は披針形で、広めの翼がある長い柄があり、株もとから株立ちする。
 花期は4〜5月。葉とほぼ同じ高さの花柄を出して、その先に左右相称の紫色の花を横向き、やや下向きにつける。唇弁には濃い紫色の筋が見られる。は円柱形で5〜8mm。花後の葉は大きく幅も広くなる。
 さく果は長楕円形で先が尖り、長さ5〜8mmほど。
 名前の由来は花の形が大工の使う墨壺(墨入れ→すみいれ)に似ていることによる。




    ツボミから花へ
写真2019.4.30松美町

       花-拡大

写真2019.4.30松美町

        さく果
写真2019.4.30松美町

    閉鎖花から果実へ
写真2022.10.14松美町

    さくか開裂の直前
写真2022.10.14松美町

     種子の様子
写真2022.10.14松美町

 アリの好むエライオソーム
写真2022.10.14松美町


   種子散布後のさく果
写真2022.10.14松美町