民具補説   
          ヘッタ鍬について     

 昔〔昭和の初めまで〕は現在の鉄の鍬〔金鍬〕は少なく、ほとんど「ヘッタ鍬」〔畔塗り鍬〕でした。鉄の鍬は刃の面の長さが短いこと、使用後には丁寧に洗っておかないと錆びることなどで敬遠されていたようです。
 ヘッタ鍬の木部はよく乾燥したブナ材を使って作られていました。それにU字型の刃の部分をはめ込んで作りました。
ヘッタ鍬と鉄鍬
 そのため、天気のよい時期には長時間天日にあてて置くと木部が乾燥して縮み、がたついてきます。それでたとえば昼飯を食べに家に帰るときなどには必ず水につけておく必要がありました。〔※いずれの鍬も使う前には、必ず水に浸して柄のがたつきがないようにするのが常識でした〕
 また、畑の場合は、穴を掘ってその中に入れて土をかけて置きました。ヘッタ鍬は長さも長く作業しやすく仕事がはかどりました。
 また、ヘッタ鍬には大小あり小の方は畑うちなどの作業に使い、大の方は田堀り〔新田開発〕作業や土方で力のある人が使いました。
 田堀り作業で大のヘッタ鍬を横にして使用しますとモッコの中に他の鍬の2倍の土を入れることができましたがそれだけに疲れるものでした。私は大のヘッタ鍬を使う人と一緒に畔塗りをしたことがありましたが、一生懸命やっても、大のヘッタ鍬を使う人の半分の仕事しかできませんでした。
 その人は他の家に手伝いにいくと仕事も人の2倍しましたが給金も他の人の2倍でした。
 その他の鍬では三本鍬万能鍬、唐鍬、草削り鍬などがありました。〔下記図〕
その他の鍬 ※詳しくは民具当該項目参照
          文・図  田辺雄司 〔居谷〕