カタバミ
暮らしとの関わり
 石黒ではカタバミのことを「チンチングサ」と呼んだ。円柱形の果実を男の子の性器に見立てたものであろうか。
 昔(昭和20年前後)の子どもたちは、よくこのカタバミの葉を摘んで食べた。スイバと同様酸味があり美味しかった。
 カタバミは、大人には畑の強害草の一つで憎まれたが、当時の子どもには親しみをもたれた草の一つであった。
 食糧難の太平洋戦争前後の頃の子どもにとっては、「食べられる」というだけで、その植物に何よりの親しみを感じたのであった。
 また、成熟した果実に触れると生き物のように鞘がはじけて細かな種が飛び出たことをおぼえている。
 暗くなると葉が閉じる休眠運動について知ったのは、中学生になってからであった。

資料→本サイトに見られるアリ散布植物

(写真上・右上2005.6.18上石黒 右下2005.8.1下石黒)


         田の畔の個体

写真2015.6.24原町

           カタバミの花

写真2005.8.1下石黒

   10個の雌しべと5個の花柱

写真2005.7.19下石黒

            花期のカタバミ
写真2005.7.19下石黒

        果実期のカタバミ

写真2009.10.25寄合

              果実

写真2009.6.7下石黒
解 説
カタバミ科
 全世界に分布するといわれる多年草
 主根は基部がやや大きくなり、地下に垂直に伸びる根がある。茎はよく分枝し下部は地中や地上を這い上部は立ち上がって長さ10〜30p。
 茎や葉には粗い毛がある〔下写真〕。また、地上に接したところから根を出す。
 葉は互生し基部に小さな托葉のある葉柄をもち3小葉からなる〔左写真〕小葉の長さは約1p、縁や裏面にには茎と共に多少毛がある。葉は昼は開いて夜は閉じる。
 花期は春から秋と長く葉のつけ根から花柄をだしてその先に1〜6個の黄色の花をつける。花は小さくガク片が5個、花弁が5個、雄しべ10個、1個の子房に5個の花柱がある〔左写真〕
 果実は円柱形で熟すると多数の種子をはじき出す〔下写真〕。  また、アリ散布植物で、アリは、エライオソームだけ餌にして種子は捨てるためそこで発芽し自生地を広げる仕組みである。
 カタバミには蓚酸が含まれているため昔は真鍮を磨くために用いたという。
 名前の由来は、夜、葉が2つに折りたたまれた状態で片方が欠けて見えることによる。



       葉の形
写真2005.6.18上石黒

  吸蜜するハナアブなど

写真2015.6.24原町

     長くのびる茎

写真2012.10.25椎谷

  種子を出し変形した果実

写真2009.10.14下石黒

  アリの好むエライオソーム
写真2011.6.29下石黒

        托葉

写真2009.10.14下石黒