とじ針
   
 
 昭和中期まで、とじ針は、どこの家にもあった道具の一つである。
 使い道は、様々であった。ムシロタテを作るときなどもコデ縄を綴じ張りに付けて重ねたムシロの端を巻き上げるように綴じて、2枚、3枚のムシロを縫い合わせて作り、不用となるとコデ縄を抜き取って分解した。
 その他、草履や下駄の鼻緒を取り付けたり取り替えたりする時にも使った。また、スゲボウシミノボウシの頭に竹を取り付ける時にも苧縄を通して使った。
 筆者が子どもの頃には祖母は囲炉裏の下座の自分の場所のムシロ(敷物)の下を定位置としてトジ針を保存しておき、オニグルミの堅い核(から)に包まれた食用部分の種子を取り出すとき等に使っていたことを憶えている。