ヤマボウシ
暮らしとの関わり
 石黒では「イツギ」と呼んだ。
 梅雨の頃、山道で見かける。水平に広がった枝に咲くヤマボウシの花は人の足を止めるほど美しい。→写真
 石黒城跡のある城山にある大木は、花期には遠くからも目をひく。ちなみに昔はこの花が咲き始める頃が田植えの最中であった。
 
果実は子どもの頃によくとって食べた。少しスカスカするが一種独特の甘味、今になって想うに南方の果物に通じる甘味である。種子は数個あるが小さくて気にならず果肉は意外と多い。ただ、虫が入りやすいことと傷みやすいのが欠点であった
 城山の尾根の北側絶壁に生えたヤマボウシの大木につく果実は我々子どもにとっては高嶺の花ならず高嶺の実であった。たわわと実った果実を眼前に見ながら採ることのできない口惜しさは60余年過ぎた今も忘れられないほどである。
 筆者の屋敷跡からよく見えるその大木は、今も毎年絢爛たる花をつける。筆者にとっては1本のヤマボウシの樹木を越えた存在であり、花期に眺める度に言葉を越えた挨拶を交わす仲である。
 先日、石黒川から急斜面を上って大橋勝彦氏と訪れて見るに根元は径70cmほどもある大木である。これほどの大木は極めて珍しいものであろう。→写参考写真
 用材としては堅く強靭なため農具の柄やモチツキギネなどに利用された。杵は丸太のまま利用したものも見られる。(写真参照クリック)
 2007.9.4日の地蔵峠の祭りの帰路、道の脇で珍しいほどよく実のついたヤマボウシを見かけた。〔下写真〕
 今日(2015.8.31)、近くの知人の家の庭でたわわに実をつけたヤマボウシに出会った。家人は留守で間近で観察出来なかったが石黒に見られるものと比べ葉が若干厚く葉脈が明確でないように見えた。後日、家人に尋ねて確かめたいと思っている。(下写真)
 その後、9月5日に東本町通りの街路樹に沢山実をつけたものがあった。こちらは、葉の葉脈などから石黒に自生するものと同じようである。(下写真)

(上上写真2005.6.12落合 上下写真2005.9.3板畑 左中写真2005.5.26板畑)


              花のつくり


   花期の終わりに包葉がピンク色となる種(上)

写真2011.6.17 鵜川中山峠

             ヤマボウシの果実

写真2007.9.4 石黒側地蔵峠への道端

          ヤマボウシの紅葉

写真2007.11.15 大野

         市街地出会ったよく果実をつけたヤマボウシ

写真2015.8.31長浜町

写真2015.9.5東本町


解 説
ミズキ科
 本州以南の山地に自生するする落葉高木。高さ6〜15m。
 葉は短い柄があり対生し長さ6〜13p、幅3.5〜7p。縁は全縁であるが多少波打ち葉脈が明確であることが特徴
(下写真)秋には美しく紅葉する。〔下写真〕
 花期6〜7月。枝先にやや長い花柄を出して、4枚の花弁状の包葉を開き中央に小花が球状に集って咲く
(左下写真)。花の形は庭園樹のハナミズキに似ている。
 花(総包)は初め淡緑色であるが後に白色に変わる。終わる頃に花弁〔包葉〕が桃色に変わる種もある
(左下写真)
 果実は、ガク筒が融合してイチゴのような形でサッカーボールのような六角形がありその真ん中の突起は残存する柱頭である。いわゆる集合果である。
 名前の由来は丸い蕾の集まりを坊主頭に、白い包葉を頭巾に見立てたもの。



     ヤマボウシ幹
写真2007.9.24 大野 

     ヤマボウシ葉

写真2005.9.2 下石黒

        果実

写真2005.10.2 下石黒

        果実
写真2014.9.14大野

      果実と種子

写真2009.9.14 寄合

  道路に落下した果実
写真2015.9.5市内東本町