1人用餅ツキ杵     

 昔は、正月のみならず秋祭りや祝い事があれば必ずと言ってよいほどモチをついた。〔→参照 日本における餅文化について〕
 石黒では1人用キネが多く使われた。大抵の家では家長がつき、アイドリ(臼の中のモチをかえす役目)は家長の妻がやった。だが、つく前にこねる作業は2人キネを使って素早く行うこともあった。 
 年の暮れの餅つきには、
4臼も5臼もつくので、お昼過ぎまであちらこちらの家から「ドン、ドン」という1人キネでモチをつく音がしたものだ。
このキネを使って藁たたきをする家もあった。
 また、このキネとウスをつかって、石黒では、昭和初期までは、精米も行われた。臼の中に玄米を入れて杵で叩いて玄米の皮を取り除き白米にする。石黒では「千搗き-せんづき」と呼ばれていた。いわば、千回つかないと白米にならないということである。これも、冬の大切な仕事の一つであった。
 その他、自家製味噌作りで、乾燥した味噌玉を砕く時にも、この杵と臼を使った。砕いたものに塩と麹を入れて大きな味噌桶に仕込んだ。

→参照・年中行事