ワラビ
暮らしとの関わり
 ワラビは石黒では最も身近に見られるシダ植物である。 
 また、昔からゼンマイと並んで貴重な山菜であった。しかし、昔は、石黒では現在のようにアク抜きをしてそのまま食べることはなく、ゼンマイ同様に干したり、あるいは塩漬けにしたりして保存食として食べた。
 干したものは、人それぞれであろうが、味はゼンマイに劣ったが歯触りがよいことでは勝ると筆者は思う。
 また、ゼンマイに比べて採取地が広く、期間も長かったので「ワラビ採りは、ヒト(他の人)の後を行っても恥をかく〔採れない〕ことはない」と言われた。
 昔は根から澱粉をとり糊〔のり〕にしたり飢饉時の食料にしたと伝えられる。WEB上の情報によれば根から澱粉をとったあとの皮はワラビ縄の材料として使われたという。ワラビ縄は強靭でとくに耐水性があり土蔵の要所の小舞縄に使われたとあるが、石黒では耳にしたことはない。
 また、子供の頃に「山のヘラ(斜面)を上るときワラビをつかむな」とも言われた。堅い茎が割れると鋭く子供の柔らかな手を切るおそれがあったためであろう。
 ちなみに、今日(2018.2.24)調べた文献に、鯨波村の江戸期の産物のなかに当帰(トウキ)黄蓮(オウレン)、蕨(ワラビ)と並んで紫蕨とあるが、若芽の色で分けたものらしい。石黒でも両方が見受けられるが、どちらが産物として上位であったのであろうか。おそらく緑色の方であろうが確かめておきたい。

(写真上・右下2009.7.3寄合風張 右上・上2005.6.5.下石黒右上・下 葉裏2005.5.25 落合)


               春の出芽

写真2015.4.24板畑

                群生
写真2013.7.5場所不明

             若草の頃

写真2008.5.19落合

          秋に色づいたワラビ

写真2009.11.5大野

             初冬のワラビ

写真2009.11.24大野
解 説
ウラボシ科
 日本全土の日当たりがよく水はけのよい土手やヤブの中に生える多年草。夏緑性のシダで冬には地上部が枯れる。
 根は、径が約1pほどで地中深く長く横に伸びる。
 葉はまばらに出て高さ1m以上にもなり、葉柄は黄緑で無毛、滑らかあるが基部の地中にある部分は黒色で細い毛がある。
 葉身は、ほぼ皮質で堅く卵状三角形(左下写真)で長さ幅共に50pくらい。3回羽状に分裂し裏面には通常柔らかい毛がある。
 胞子嚢は連続して葉縁に沿って生じ葉の縁が裏側に反り返って包膜状となり、その内側にある真正の包膜と合わせて2枚の膜で胞子嚢群を包む。(写真準備中)
 春に出る握り拳を振り上げたような形の若芽(上写真)を採って山菜とする。
 名前の由来は「ワラ」は茎、「ビ」は「食べられる」を意味するなど諸説あり不明。また、古くはゼンマイを含めてワラビと称して「山菜」を意味したとも伝えられる。



     茎断面

写真2009.7.11下石黒

     固い皮質の茎

写真2009.7.11下石黒