クマバチ(クマンバチ)
暮らしとの関わり
 石黒では、マルハナバチなどの仲間を総称して「ヘボバチ」と呼んでいた。スズメバチなどとは、異なり子どもたちは恐れることはなかった。触らなければ刺さないと信じていた。
 筆者は子どものの頃から70歳ころまで、アシナガバチ、ジバチ、ヌカバチ、スズメバチなどに、石黒での草刈り作業などでは必ず年に1〜2回ほどは刺された。
 しかし、クマバチ類に差されたことは、たった一度しかない。それは小学校低学年のときに、カボチャの花に入ったクマバチを花の先端を絞るようにして持ち、閉じ込めて遊んでいて、人差し指の先を花の内部から刺されたことがあった。意外に痛かった記憶がある。
 それから、太平洋戦争直後、砂糖の全然ない時代は花の蜜をよくなめたが、ハナバチを虫取りネットで捕まえて、殺して胸と腹を引っ張って離すと径3〜4ミリの球形の透明の蜜袋が現れた。それを舌の上でつぶす甘くて美味しかった。残酷なようだが、当時の子どもたちは甘いものに飢えていたのであった。
 ところで、上の写真はタニウツギの花は、春の撮影と思われるであろうが、実は、先日2016.9.30日の撮影である。
 その狂い咲きしていたタニウツギの花に1匹のクマバチ寄ってきたのだ。私は、タニウツギの花もクマバチも久しぶりなので目を近づけて観察してみた。そして、自分にとっては貴重なる発見をした。それは、右欄の解説にもあるが、クマバチは花の正面から顔を入れることはなく、花の付け根に近い部分、おそらく蜜の溜まっている所に口先を差し込んで蜜を吸う能力も身に着けているということだ。
 参考のため、早速ビデオを撮ったのが下の資料である。
 それにしても、ずんぐりした太い体のわりに小さな羽である
が、意外に優れた飛翔力を持っていることに驚く。

上写真 2016.10.2 西港町 (※タニウツギは狂い咲き)

ビデオ資料→クマバチの盗蜜

解 説
ミツバチ科
 北海道から九州まで広く分布するハナバチの一種。
 体長は2cmを超え、ずんぐりした体形で、胸部には細く細かい毛が多い。全身が黒く、翅も黒い中、胸部の毛だけは黄色いのでよく目立つ。
 体の大きさの割には翅は小さい。メスは顔全体が黒く、複眼は切れ長。額は広く、顎も大きいため、オスにくらべて頭が大きい印象。
 食性は、他のハナバチ同様、花蜜・花粉食で様々の花を訪れる。頑丈な頸と太い口吻を生かして、花の根元に穴を開けて蜜だけを得る盗蜜もよく行う。
 とくにフジの仲間の花はクマバチに特に好まれる。藤の花が、クマバチの力でこじあけないと花が正面から開かないからだ。フジもクマバチに花粉媒介を頼る。
 オスは比較的行動的であるが、針が無いため刺すことはない。毒針を持つのはメスのみであるが、捕まえたり巣に触ったりしない限り刺すことはない。
 春に受精して巣づくりを始める。強力なあごで木材や枯枝に長い穴を 開け奥から順に仕切って数 個の育房をつくる。長い穴には、間仕切りを8個ほど作り、そこに卵を産む。その部屋には花粉も蓄えられており卵から成虫になった個体は未成熟のまま越冬する。
 名前の由来は、そのずんぐりした体形と毛があることによるものであろう。