アシナガバチ
暮らしとの関わり
 アシナガバチは、子どもの頃からハチの中でも最も親しみを持ったハチであった。アシナガバチはガンギなどの軒端に小さな巣をいくつもかけた。
 子ども達はこの巣を取って魚釣りの餌に使った。川へ釣りに行く前は、釣り具の用意ができるとアシナガバチの巣を探した。大きな巣になると4〜5匹のハチがいて時には刺されることもあったが、刺されないよう採ることでスリルを味わうことができた。
 しかし、アシナガバチの幼虫は魚釣りの餌として魚の食いつきはよいが壊れやすく柳虫のように何度も使えなかった。
 また、蓋のされた部屋の中には蛹からハチにかえったものもあり、これは使い物にはならなかった。
 昔の石黒では、アシナガバチにとって、子どもはスズメバチ同様の天敵であったかも知れない。〔子どもの暮らし〕
 巣を奪われるアシナガバチも反撃した。1年に3〜4回蜂に刺されることは男の子では普通のことであった。刺されたら小便をつけるとよいなどと言われていたが、刺され慣れしている当時の子どもにとって、そこまでする必要はなかった。15分も我慢すれば痛みは引いたからだ。
 ところで、現在、当時に比べるとアシナガバチは激減している。おそらく、過疎化による人家の減少(※1950年の石黒の戸数260戸−2010年の戸数64戸−2015年の戸数48戸)と家屋の改築により営巣に適した軒など場所が少なくなっていることも原因の一つであろう。

〔写真上・右上2006.7.9上石黒 右下2006.10.30下石黒〕


   落とし板の隙間で冬ごもりする蜂

    体を寄せ合い保温する様子

写真2006.10.30下石黒
解 説
スズメバチ科
 山地でも平地でもごく普通に見られる。
 体長25〜35o。体は細長く黒色で各部に黄色い斑紋や斑帯がある。女王蜂も働き蜂も形は同じ。
 日本にはアシナガバチは7種が知られる。枯れ草木の表面から集めた繊維で和紙のような材質の巣を作る。
 巣の形はハスの実を逆さにした形。付け根は細い一本の支柱で天敵アリの侵入を防ぐ。
 越冬からさめた女王蜂は単独で巣を作り、卵を産み幼虫を育てる。
 夏には働き蜂となり幼虫の育成を手伝う。働き手を得た女王蜂は産卵に専念する。
 幼虫の餌は青虫などで、かみ砕いて団子状にして与える。秋には死滅するが、成虫の中の一部が雄蜂と交尾後物陰などで体を寄せ合って越冬する。〔写真右下→石黒の山小屋の落とし板の隙間にいたもの〕
 名前の由来は空中を飛ぶときに後ろ足をまっすぐに伸ばして飛ぶことによる。



    長い後ろ脚


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