ヤママユ
暮らしとの関わり
 石黒では蛾を「ベットウ」と呼んだが、ベットウと言うとクスサンとヤママユの成虫を思い出すほど印象に残っている蛾である。
 網戸などなかった昭和30年代の頃までは、夏、屋内の電灯にも多くの蛾がよってきた、その中で最も嫌われたのはクスサンとヤママユの蛾だ。
 電灯の下に箱膳を並べ車座になって夕飯を食べている時代であり明かりによってくる大型の蛾は鱗粉のみならず電灯の笠の上のホコリまで落とすので大の嫌われ者であった。
 しかし、幼虫に関してはクスサンに比べて個体の数は少なかった。クスサンの幼虫は見かけたがヤママユの幼虫はたまにしか目にしなかったからだ。雑木林の多い石黒であるがブナが多くナラ系の木の比較的少ない土地であることがヤママユの蛾の数が少ない原因ではなかったか。
 最近、昆虫の撮影をしてみて、ヤママユもクスサンもハネの色は様々であることに気がついた。(→写真)。それと共に、これだけ個体差のある成虫が見られるということは、石黒にはヤママユの幼虫の数も相当に多いとも考えている。
 このヤママユの幼虫の体に卵を産み付けて寄生する蜂、コンボウアメバチはよく知られている。筆者は昨年秋にヤママユを取ってきて孵化様子の観察を試みたが、出て来たのはコンボウアメバチであった。数年前にも同じ経験があるのでおそらく寄生率はかなり高いものであると予想される。今後、データとともに実際に調べてみたい。
 左欄の布はヤママユガの繭から紡いだ糸で織ったものである。ヤママユガの繭はカイコの繭の20倍もの値段するほど貴重なものであるといわれている。
 長野県の穂高町では江戸時代から飼育された歴史があり、現在も飼育されているとのこと。

資料→クスサンとの比較

(写真上2005.9.29下石黒 右上2004.11.23下石黒)


             翅の色は様々
写真2007.9.17下石黒

     
ヤママユに寄生するコンボウアメバチ

写真2010.4.21 松美町〔マユ採取下石黒〕

解 説
ヤママユガ科
 テンサン(天蚕)とも呼ばれ、全国各地に分布している。
 成虫は1年1回発生し、体約長3.5p、開帳13p。前後のはねの中央に眼状紋がある。口は退化して無い。雄の触覚は羽のようであり雌の触覚は櫛のようであり雄雌を区別できる。(下写真参照)
 幼虫はクスサンに類似し(交配可)クリナラ、クヌギの葉を好んで食べる。繭からは良質の糸がとれるため長野県では各地に放養育されたことがあった。
 名前の由来は山蚕の意味。



   雄雌の触角の比較
(写真2007.8.24 上石黒)

      体の様子

写真2007.9.9下石黒

        繭

2008.12.2畔屋

  ヤママユの繭から織った布
写真2013.9.25 大橋美恵子