ブナ
暮らしとの関わり
 石黒は、「ブナ林の里」といわれるほどブナ林が多い。集落の周りで最も多く見られる樹木はブナである。
 昔は、ブナは燃料の薪として使われたが、建築用材としては適さないため「雑木」と呼ばれ評価が低かった。
 とはいえ、茅葺き屋の上道具や雪下ろしのコスキなどの用材に使われた。
 石黒で、半年にもわたる雪の中で待ちかねていた春を彩るのはブナの若葉である。ブナは、豪雪の年には1メートル余の残雪の中で葉を開いた。
 子どもの頃からブナ林に囲まれて育った石黒の人たちにとって、ブナは故郷の木そのものであろう。また、秋のブナの紅葉もそれなりに美しい。→参考写真
 昭和50年頃から、環境保護の視点からブナは見直され評価が高まっている。
 筆者の子どもの頃は、ブナの実「コノミ」と呼び拾って炒って食べた。
 また、ブナ林を歩くとしばしば幹の奇形に出会う。幼木の時に出来た傷を修復するために形成されたコブがそのまま、成長したものであろうか。→参考写真。
 その他、葉に様々な虫えいが見られる〔写真右下〕。筆者の経験では、薪にするために伐採した木のほとんどに虫の被害が見られた。その多くは、害虫(クワカミキリムシか)によるものであった。右下写真)。WEB上の資料によれば標高500m以下のブナ林が被害を受けやすいという。
 2012年の6月下旬に門出地内のブナ林で、隣接する2本の大木が倒木と立ち枯れをしたため、林床に日光が差し込み数年前の結実年の実生と思われる幼苗が繁茂している場面に出会った。
→写真 
 昔は、ブナは貴重な燃料材であり、計画的に伐採が行われることで世代交代が自ずと行われていたのであった。
 また、筆者の観察ではブナの根はケヤキに比べると太い根がなく長さも短く、ひとまとまりになっている様に思われる。(下写真)
 また、筆者の生家西側にある二本のブナは並んで生えているが、芽吹きに2週間ほどの差がある。子どものころから毎年のことであり、今でも不思議に思っている。→参考画像

 ところで、ブナの木のことで一つ忘れられない思い出がある。それは、今から50余年も前に、筆者が栃尾市の半蔵金田代で出会った折れ曲がった一株のブナである。その日、早春の山の残雪は堅くしまっていて、分校の子どもたちは喜々として走りまわっていた。標高500m余のそこからは前方に守門岳の雄大な姿を眺望できた。つい見とれていると、近くで遊んでいた子供たちが「鹿がいた」と騒いでいるので近寄って見ると、このブナであった。まさに自然の芸術とも言いたい一株のブナに見とれてしまった。→※鹿の形に見えるブナの株-参考写真 
 光陰矢の如し、ブナの鹿に出会った子等も早や還暦の年頃であろう。(記2014)→参考写真

 昨日、早朝に石黒の山小屋を訪れると、庭に垂れ下がったブナの葉に子どもの頃によく見た記憶のあるゴマダラオトシブミの巣を目にした。何か懐かしいものに出会ったようでうれしく思った。(下写真)

(上写真2005.5.3板畑 右上2005.10.29下石黒 右下2005.10.28下石黒)


ブナの大木(右上は切断したフジ蔓)
2011.4.28 上石黒嶺坂

       開く直前のブナの芽



写真2011.4.21落合

写真2011.5.8落合

          ブナの紅葉のはじまり


2008.10.16 大野

      紅葉−釜坂峠から扇ケヤキ方面

写真 2019.11.17 寄合 2019年の秋のブナの紅葉は特に良好

         ブナの根の張り方

写真 2012.11.4 下石黒 ※ケヤキに比べ細く、広がらない

             ゴマダラオトシブミ

写真2016.7.20下石黒

  今秋のブナの結実具合は、上中下では中であろう

 撮影 2018.10.2 下石黒 地名ツマキダの農道


解 説
ブナ科
 北海道から九州のやや高い山地に生え、幹の高さは30メートル。幹の径は170pにも達する。雄雌同株
 樹皮は平滑で灰色である(左下写真)
 葉は互生し長毛のある葉柄があり、形は卵形で左右不同のものもある。葉の縁には鋭い鋸歯がある。長さ5〜10p。
 花期はし4〜5月。
 ブナの芽には、花と葉と枝の入っているものと葉と枝だけのものがある。また、芽は寒さから保護するために何枚もの芽鱗に覆われている。
 雄花の尾状花穂には長い柄があり、新枝の下部の葉の付け根から垂れ下がり多数の細かな花をつける(左写真)
 雌花の花穂も葉の付け根から出て普通2個の花をつけ垂れ下がらない(左写真)。総包が花を包む。
 子房は長いつぼ状で花柱は3個ある。風媒花。 
 果実は堅く、栄養分に富み森の動物の貴重な食糧源となっている(上写真)。 そのため、ブナは果実を平均的に毎年結実しないで5、6年に1回、例年の数倍の実をつけ、動物が食べきれない量の種子を落し子孫を残すといわれる。
 名前の由来は不明。


      芽吹き前

  写真2011.4.下石黒

   芽吹き〜若葉〜果実へ

       
       葉 芽



 写真2011.4.28落合

写真2011.7.4下石黒

若い果実

  写真2007.9.13下石黒
 
      若い果実
写真2007.9.18下石黒

      果実-2
写真2015.10.3下石黒

     果実のつくり
写真2015.10.3下石黒

        種子

写真2005.10.28下石黒

果実横断面種子1個不熟

写真2015.10.3下石黒

  幹に見られる害虫の穿孔

写真2011.6.11落合

 虫えい−ブナハマルタマフシ

 虫えい−プナハベリタマフシ 



    ブナ材の木目

写真コピー


     村の古老の話から
 「ブナの木は欲張りな木で降ってくる雨を独り占めにするので、枝下の林床には草木が育たない。」
 確かに、雨の日にブナ木を観察すると幹を伝って雨水が流れ落ちている様がわかる。 残雪の中でいち早く芽吹くブナの木の根元は丸い穴状に雪が解けて丸く地面が現れる。 編集会
拡大→クリック 
  編集会