ウスタビガ

   (雨水を排水する孔)
暮らしとの関わり
 子どもの頃、晩秋から早春に山遊びに行くと必ずといってよいほどウスタビガのマユ(繭)を取って帰った。(大人になってからも見つけるとついつい手が出てしまう)
 この時期には既に成虫が羽化したあとであったが子どもの頃はマユの中にサナギがいるものとばかり思った。時にはマユに黒い小さな卵が産みつけられたものもあったが、それがウスタビガの卵とは知らない子どもたちは、マユの汚れのように見えたため採っても捨ててしまうことが多かった。
 子どもたちには、その卵が春に孵化して夏にマユを作り秋には羽化して卵を産んで死ぬという、やたら忙しい一生を送ることなど知る由もなかった。ただ、その美しい色のマユそのものに魅了されたものであろう。大人の中には「山かます」などと呼ぶ人もいたが当時の子どもの間では浸透しなかった。
たしかに、多くの蛾のマユが俵状であるのに比してウスタビガのマユは上部が密閉されておらずカマスの形に似ている。
 ところで、昨日(7月25日)にブナ林でサナギの入ったマユを取ってきて開いてみると中のサナギの腹から5匹の寄生虫が出てきた。サナギはすでに死んでいた蜂類に寄生されたものらしい。→写真

写真上・右下2005.12.8.上石黒 右上2005.10.6 上石黒


             成 虫 (メス)

写真2007.11.17上石黒

     鮮やかな若草色に魅了されて撮影

写真2012.12.29上石黒

解 説
ヤママユガ科
 北海道から九州に広く分布。
 成虫は秋10〜11月に遅く発生する。
 開張約70〜110mm。体の特徴はメスはハネ、体毛が赤褐色で前バネが細く先端が尖りメスよりかなり小型。メスは大型で前バネが大きく幅があり先端がまるい。また体毛が黄色。したがってオスは全体が褐色、雌は黄色。
 幼虫はブナ科、バラ科、カバノキ科むなど各種の葉を食樹とする。
成虫は年1回。羽化は10月〜11月に行なわれ、交尾後、食樹の枝やマユの表面に産卵する。(下写真)成虫の口は退化していて、羽化してからものを食べないという。
 。マユは緑色の保護色でヤマカマスなどと呼ばれる。



      ま  ゆ

写真 2005.9.10 大野

     ウスタビガの卵

写真 2009.12.6上石黒

   横に穴のあいたマユ

写真 2008.12.3下石黒
※蛹に寄生した蜂類がかじって脱出したものであろうか

   寄生した昆虫の幼虫
写真2007.7.26 下石黒
→左欄 写真 参照