キツネ
暮らしとの関わり
 キツネは昔から滅多に人の目にはつかなかない獣であった。ふるさと石黒では、子どもにとって幻の獣と言ってもよいくらいであった。
 しかし、近年、里山が荒れてから集落の周りに姿を見せるようになった。夜間に車のライトがとえらたキツネを見ることは今では少しも珍しいことではない。時には、車に轢かれたキツネの死骸も見かける。
 キツネの、雪面の足跡は、イヌのそれより細長く一直線上に並ぶ特徴がある。(右下写真)
 昨日(2009.5.28)、望遠レンズの使い方に慣れるため、一昨日にオオヨシキリを取った場所に向かった。天気予報では最高気温29度の夏日ということで、山笠をかぶって撮影用一脚を杖代わりについて松沢川の山道を歩いていった。
 途中、30mほど前方の杉林に向かって2匹の獣が走り込むのが見えた。
 キツネだ。幸い体の大きな方の一匹は林の入り口で私の方をじっと見ている。顔をかしげて、どこか不思議げな様子だ。
  その日は体調不良をおして出かけた自分を「あの山笠のジサ、大丈夫かいな」と危ぶんでくれているような顔つきにも見える。
 キツネはじっとこちらを見たまま動かない。大きな尾までファインダーに納めたいのだが草の影になって尾が見えない。時々、首をかしげて目を細めるように見える。まるで、笑っているようだ。こちらは、「もう一歩前進してくれ」と祈るような気持ちだがキツネは依然として動かない。
 3分ほどたった頃、一段下に下りてまもなく、くるりと左に方向を変えるとジャンプするようにして草むらに入った。キツネのジャンプと同時に、連写でシャッターを押したつもりだった。
 どうやら全身を捕らえることが出来たかなと思ったが、家に帰って開いてみると前方の草が邪魔して期待は裏切られた。
 だが、このチャンスに巡り会えただけで幸いであった。ふるさとの山の神様に感謝したい気持ちだ。

 今朝(2017.9.28)、6時過ぎに、野鳥の観察を兼ねて自宅近くの国道8号線の東側の農道を歩いていると、カラスが群れて騒ぎ立てている。
 よく見ると刈り取りの終えた田の畔に一匹の獣が見える。尾の様子からキツネのようだ。望遠レンズを通して見るとホンドキツネであることが分かった。野ネズミでも狙っているのであろうか。
 低い朝陽が真向いから射して、完全な逆光でキツネの姿はシルエットのようだ。少し場所を移動するためこちらが動き出すとそれに気づいたキツネは、とっさに、稲の刈ってない田に走って逃げ込んでしまった。→拡大画像
 市街地周辺でキツネに出会うとは、思いもかけないことであった。

〔写真撮影上2009.5.28下石黒松沢川・右上 道郎〕


         柏崎市街地周辺の水田で見かけた個体

写真 2017.9.29 中田
      
解 説
イヌ科
 平地から標高1800mくらいの山地に分布するが高山帯にも見られ生息域は広い。
 体長65〜75p。尾長40〜50p。体重3〜6s。体色は口のまわりと腹は白く他は褐色。前足の前面は黒い。
 主に夜行性であるが霧の深い日などは昼も活動する。
 行動範囲は2〜7q四方。ノネズミ、ウサギ、小鳥、昆虫などを餌とする。ネズミを襲う時の、立って飛び上がり上からかかる姿は独特である。5〜6月に2〜7頭の子を産む。子は一ヶ月間は乳をのみ秋には親と別れて暮らす。



   一段下に下りたところ

写真2009.5.28下石黒松沢川

     雪上を歩くキツネ
 撮影者 道郎

    キツネの雪上足跡

撮影日2005.12.2落合

  市街地周辺の水田地帯で

写真 2017.9.29 中田