ノイバラ
暮らしとの関わり
 石黒では「エバラ−いばら」と呼んだ。
 子どもの頃、エバラと聞くと花よりも鋭いトゲを連想した。あまり好感を持たれない木の一つであった。
 しかし、時には花をびっしりとつけた大株のノイバラに出会ってその美しさにしばらく見とれてしまうこともある。上の写真は居谷集落の道沿いで出会った野バラである。(参照→原画) 花をよく観察すると花の王様とされるバラの原種にふさわしい気品のある美しさがある。→写真
 昭和40年代に生まれた方は、学校の国語科の教科書で小川未明作「野ばら」という物語を読んだ記憶があるかも知れない。一株の野ばらが咲くのどかな山の国境に派遣された二つの国の兵士、大きな国から来た老人と小さな国の青年兵は、いつしか仲よくなる。2人が楽しく歓談する場所には平和の象徴である野バラの花が咲き佳い香りを放っている。
 しかし、ある日、両国の間に起こった戦争が2人を敵同士にしてしまう・・・こんな筋の短編小説であった。
 また、昔は石黒では、晩秋にノイバラの赤い実のついた枝を折って冬期の仏様の花とした。サルトリエバラと異なり直立した枝振りであるので仏壇の花瓶にさしても様になった。
 時には葉についた虫えいを見かける。いずれもとげ状突起や鋭い角(かど)をもっているが、外敵から身を守るためのものであろう。→写真
 昨日(2013.10.6)自転車で、米山台より山を越えて川内に出て鯨波海岸を訪れた。海に面した断崖に赤いものが見えたので上ってみるとノイバラの実であった。ところで、海岸にテリハノイバラが多いといわれるので確認したい。
 ここ数年観察して分かったことだが、ノイバラの芽吹きは、早い、昨日(2014.4.2)に市街地周辺で、すでに葉を開いた個体にであった。→参考写真
今年(2016.3.11)は、暖冬のせいか一層芽吹きは早いようだ。

(上・右上写真2005.6.12居谷 右下2005.10.1大野)


               早い芽吹き

撮撮影日2016.3.11藤元町

                   花 期

影日2010.6.11落合

                花後
撮影撮影日2009.6.16下石黒
影日2011.6.20下石黒

           赤い実をつけたノイバラ

撮影日2007.12.20居谷

       たわわについたノイバラの実

影日2009.11.下石黒

               浜辺のノイバラ
影日2013.10.6鯨波海岸

           たわわについた果実

影日2014.9.27 松波町川沿い

                 虫えい-1
撮影日2013.8.3下藤井−バラハタマフシ

解 説
バラ科
 北海道から九州まで各地に自生する落葉低木
 茎は直立あるいは斜上し盛んに分枝して茂みをつくる。
 茎や枝は無毛でなめらか、高さ2mくらいで枝には鋭いトゲがある。
 葉は互生し柄はなく奇数羽状複葉で小葉は7〜9枚で長さ2〜5p。縁には鋸歯があり上面は無毛で光沢はなく下面には細毛がある。
 托葉皮針形で鋭く切れ込み軟毛があって下半分は葉柄に密着する。
 花は5〜6月ごろ枝先に円錐花序を作り密集してつく
〔左上写真〕。花は白色ないしは淡紅色で芳香があり、花茎約2p。花柄は無毛または少数の腺毛を生じる。
 ガク筒はなめらかでガク片皮針形で縮れた毛を密生し、反り返る。花弁は5個、水平に開き心臓形〜広倒卵形で頭部は凹む。黄色い多数の雄しべがある。
〔上下写真〕
 果実〔偽果〕は小形(径0.7〜1p)で花序に多数つき球形で表面には光沢がある。秋、赤く熟し落葉後にも残り昔からこれを生薬として用いた。
 また、茎はバラの接ぎ木台として用いられた。
 名前の由来は野にあるバラの意味。「イバラ」はトゲのある低木の総称。




        つぼみ

影日2011.5.28大野

     横から見た花冠

影日2009.5.27寄合

  ノイバラの実のできはじめ


     ノイバラ青実

影日2006.7.26寄合

      成熟果実
影日2013.10.6鯨波海岸

          種子

 影日2011.10.1寄合

      虫えい-2
撮影日2013.8.3下藤井