ヌスビトハギ

暮らしとの関わり
 石黒では「コジキブクロ」と呼んだ。果実が、托鉢の僧や乞食が首からかけている袋に形が似ていたことからついた呼び名であろうか。
 草藪に入ると衣服にたくさん付くので嫌われたが、子供たちにはどこか親しみの感じられる草であった。
 ピンクの花は近くでよく観察すると美しく可憐である。一本の草に、すでに充実した果実もあれば、花ありつぼみありと珍しい植物の一つである。極端にくびれた果実の形も興味深い。
 名前の由来について、「盗人が足音がしないように、足の外側を使って歩くその足跡に豆果の形が似ていることによる」〔牧野植物図鑑〕という説明は釈然としない。足の外側を使って歩くと資料のような形になると思われるが・・・確かに似ていると言えば似ているが・・・・。

〔写真2005.8.28 落合〕


               果実期
写真2011.11.9 下石黒

      赤褐色の斑紋のある果実

写真2008.10.18 下石黒

             互生する葉
写真2010.10.3 大野

       葉の表裏と脈上の毛


写真2005.8.28 落合


     木化した根〔左下古く枯れた茎〕

写真2009.10.12 下石黒
 
解 説
マメ科
 日本全土の林下や道ばたに生える多年草
 根は堅くやや木質である〔左写真〕
 茎は直立、または斜上し、上部は分岐し、が走り紫黒色となる〔下写真〕
 高さは30〜120pでまばらに葉を互生する。托葉は線形または被針形で長さ3〜7oで先は尖る。
  葉は3出複葉で小葉は卵形で長さ5p〜8p。幅2.5〜4p。真ん中の葉が最大〔長さ4〜8p、幅2.5〜4p〕で側小葉は小さい。裏面の脈上には毛がある。質は薄く下面は淡色〔左写真〕。小葉の形には個体による変化が見られる。
 花期は7〜9月。葉のつけ根から長い花軸を出し、総状花序をつける。花は蝶形で桃色。長さ3〜5o。幅5〜10oほどで花柄がある。ガクの先には低いの鋸歯がある〔右上写真〕
 果実(豆果)は2〜8o。扁平の豆さや形で2個の種子を入れ間が極端にくびれる。赤褐色の斑紋のあるものもある〔左下写真〕
 表面には鉤状の毛〔下写真〕があり動物などにつき運ばれる。
 名前の由来は果実の形を足をそば立てて歩く泥棒の足跡に見立てたもの。



       茎の稜

写真2005.8.28 上石黒

       花序


写真2009.8.16 上石黒

   果実表面のかぎ状の毛
写真2009.10.12 下石黒

      豆果と種子

写真2009.11.6 上石黒