ミヤマニガウリ
暮らしとの関わり
 子供の頃から、ミヤマニガウリは山道を歩いているとよく見かけた。春のうちはいかにもウリらしい蔓で、どのような実がなるのか、ぜひ果実を見たいものと期待したが遂に出会うことはなかった。
 あれから50数年たって、今、HPの植物写真を撮りに歩いて初めてその果実を見ることが出来た。
 それにしても何と貧弱な果実であることか。まさに石黒言葉で言えば「ほんに、えせぇもねぇ実」である。
 ときには大きな大群生に出会うこともある。〔下写真〕
→山腹の大群生
 しかし、ミヤマニガウリの生態は「雄性両全性異株」という珍しいものであるという。このことについて貴重なデータにWEV上で出会い読むことが出来た。
 筆者の乏しい基礎知識をもとに理解したことを記してみる。
 植物には雌雄同株と雌雄異株の他に雌花をつける雌株と両性花をつける両性花株の混じった雌性両全異株性、そして雄花をつける雄株と両性花をつける両性株の混じった雄性両全異株性と呼ばれるものがあるとされる。ミヤマニガウリは後者に属す。
 これらは、雄花や雌花を観察すると退化した雌花や雄花の痕跡が見られることから、雌雄同株から雌雄異株への一連の進化の過程としてとらえることが出来るという。
 しかし後者の雄性両全異株性には進化論的な見地から余りメリットが考えられない。
 つまり、雌株の雌花は雄しべを退化されることで自家受粉を回避することができるが、雄花が雌しべを退化させてもあまり意味がないということだ。にもかかわらず雄性両全異株性の植物が存在することの意味は何かは研究に値するテーマである。
 このテーマに取り組んで一年で不幸にも逝去した若き学徒の研究よりミヤマニガウリの雄花の働きについての一つの結果が得られたいう。
 それは、ミヤマニガウリの雄株の雄花が、地味な両性花の中に混じって咲くことによって花粉媒介者である昆虫が圧倒的に多く集まるという結果である。両性花に比べて雄花は5倍ほどの昆虫の訪花が見られたという。
 これにより他家受粉が促進されるということが解明された。
論題−「機能的雄性全異株ミヤマニガウリ集団における性比と遺伝的変異」American Journal of Botany掲載

参考資料 京都大学生態学研究センター臨時bT4
http://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/ecology/activities
/images/publish_pdf/no0054.pdf
研究者 秋本淳一さん (塩沢町でフィールドワーク中車転落よる事故死) 

(写真上2005.9.29落合 右上中下2005.10.1上石黒)

                 花期

写真2015.9.21風張 背景黒姫山

         
 ミヤマニガウリの群生

写真2007.10.4寄合

           花期のミヤマニガウリ

 写真2005.9.29下石黒ホウノキ山への農道 背景は石黒城趾

ミヤマニガウリの両性株の花と雄株の花
      両性花
両性株の花と果実。両性株の花は両性花で、下位子房と黄色い雄しべの両方がある
      雄花
雄株の花序。雄花は総状花序につく

       腐れ木に生えたミヤマニガウリ

写真2011.6.25下石黒


ウリ科
 深山の谷間に生える1年生蔓植物。雄株と両性株がある(雄性両全性異株)。
 茎は細く柔らかで巻きひげをもって他の植物にからまる(上写真)。葉はキュウリの葉に似る(下写真)。長さ5〜12p。
 花は8〜9月に咲き雄花は直立する花序をつくり白色で径5oほどの花を多数つける。(右上写真)。また、両性花(写真右中)は長い柄の先に1個づつついて垂れ下がる。
 果実はゆがんだ卵形で長さ1p。種子は褐色。(右下写真)
 名前の由来は果実がニガウリに似ているので深山のニガウリと名付けたもの。



    蔓で立ち上がる様

写真2005.7.15下石黒

    果実拡大写真
写真2005.10.1下石黒

   果実の中の種子

写真2011.10.4上石黒

     花期の雄株

写真2011.10.4上石黒

    花期の両性花株

写真2011.9.24下石黒

      巻きひげ
写真2011.10.4 落合