ミヤマカンスゲ
暮らしとの関わり
 ミヤマカンスゲはオクノカンスゲとともに石黒では「ヒロロ」と呼ばれ、ヒロロミノの材料として昔から大切な野草の一つであった。
 両種の利用にあたっては、ミヤマカンスゲは8月下旬から9月の初めに、オクノカンスゲは7月初め頃に採取したものだという。採取時期を誤ると丈が十分でなかったり細工し易い堅さが得られなかった。
 また、株を弱らせないために1年おきに採取したり、引き抜くときには根元を足で押さええるなど保全に対する配慮を欠かさなかった。
 石黒では、ミヤマカンスゲが主に使われたが土用の頃に採取して編んで陰干しにして、冬、ミノやハバキを作る材料にした。
 ヒロロは水をはじき軽く丈夫で箕の優れた用材であった。そのためどこの家でも田の畔(くろ)や家の周りの半日陰地に移植して育てていた。今日でも、家屋敷の周りでよくミヤマカンスゲを見かけるのはそのためであろう。
参照→日常の暮らし 衣

(2007.5.16 下石黒)


 
   筆者家敷跡に見られるミヤマカンスゲ

写真2007.7.27下石黒


雄小穂 雌小穂
写真2009.7.25下石黒


解 説
カヤツリグサ科
 山地に生える常緑多年草。根茎は太く短い。
 茎は多数出て高さ20〜50p。
 葉は根元から多数生え、線状で幅広く5〜10oで強靱である。縁はざらつきカンスゲに似るが軟らかい。サヤは褐紫色を帯び光沢がある〔上写真〕
 花期は4〜7月。高さ30pほどの花茎をのばしまばらに4〜5個の花穂をつける。雄花は円柱状で先端につき長さ3〜5p。雌花は雄花より下につき短く、細い柄の根元は鞘状の包につつまれる〔左写真〕
 そう果は狭い倒卵形で上端は長く尖る。
 名前の由来は深山に生えるカンスゲの意味。



     乾燥したもの

写真提供 大橋由勇