コシノカンアオイ
暮らしとの関わり
 石黒ではブナ林の中でよく目にする植物である。常緑のため初冬や早春にはとくに目立つ。
 しかし、花は、黒紫色で極めて地味であり落ち葉の下になっていることも多く、人目につかない。おそらく、花を見たこともないという人も石黒では多いであろう。花は冬から早春に咲きそのまま雪の下で冬を越す。
 石黒では斑入りのコシノカンアオイも時々目にする。〔下写真〕
 この植物の葉を幼虫の食草とするギフチョウは石黒でも春に見られるが希である。 ※ギフチョウ→昆虫篇クリック
 また、種子の数は1果あたり数十個と少ないうえに撒布はアリ〔蟻〕に頼るため、その傳搬速度は1万年に1〜3qともいわれている。〔※参考文献-小泉武栄著-多摩地域におけるカンアオイ類の分布・生体と保護・育成に関する地生態学的研究〕
 斑入りの葉の個体も石黒ではめずらくない。
 科名のウマノスズクサについて、筆者の家にあったウマノスズはドーナツ形のものであったので納得のいかないところであった。しかし、2010.7.15付けの北海道新聞に「開拓期から昭和初期までクマよけなどに使われた馬の鈴には、釣り鐘形、ドーナツ形、桃形の3種類ある」とある。釣り鐘形の馬の鈴は見たことはないが、これで納得できた。

(写真上2004.12.19下石黒 右上下2004.5.8下石黒)


              群 生

写真2007.5.12 下石黒

       斑入りのコシノカンアオイ

写真2005.10.15 下石黒
 写真2019.5.22下石黒

        コシノカンアオイの根茎

写真2007.5.15 下石黒

           花をつけた個体

写真2004.4.24下石黒

          花の内部のつくり

写真2004.5.8下石黒

  葉の形は成長にともない変化しているようにも見える
写真2011.5.2下石黒

              斑入り
 写真2020.6.7下石黒

解 説
ウマノスズクサ科
 北陸から東北地方の日本海側の山地に生える常緑多年草
 葉は長い柄をもち、やや肉厚で長さ6〜10p。
 茎や葉柄は紫色のものが多い。表面は深緑色で光沢があり無毛。普通は〔ふ〕はないが時に白い斑がはいる
〔左写真〕
 花期は1〜4月、全体が黒紫色の花を地面に横たわるような状態でつける
〔上写真〕。円筒形で先が3裂する。径やく2pで内面に縦に隆起した15本ほどのヒダと7本ほどの横ヒダがあり格子状となっている〔上写真〕
 
ガク片の質は厚く広卵形で長さ12o、幅14oで平らに開き表面は、ほぼ滑らかである〔左写真〕子房は上位、ガク筒内で高く盛り上がる〔上写真〕。子房の上に花柱は6個、直立し背部が上に伸びて角状となり、その先端はガクの入口付近にまで達する。花粉を受ける柱頭花柱の上ではなく中部の側面に張り付くようにあるのが独特。花柱には溝がある〔左写真〕
 初夏に熟した果実がくずれ種子を散布する。1個の中の種子は少なく数十個といわれる。
 また、ギフチョウの食草として知られる。
 名前の由来は、多く自生する北陸地方の古名「越」を付けたもの。




        若葉
写真2019.4.16 松美町

   シノカンアオイ新芽

写真2007.5.15 下石黒

     紫色の茎・葉脈

写真2009.4.9下石黒

          

     花の外面拡大

    ガク片表面の紋様

写真2004.5.8下石黒

      葉の表裏

写真2010.5.6下石黒
 写真 2020.6.7下石黒