カラスノエンドウ〔ヤハズエンドウ〕
暮らしとの関わり
 石黒ではカスマグサは、しばしば見かけるがカラスノエンドウはごく希にしか見かけない。どちらも石黒では少ない植物である。多雪地帯の石黒では越年草としての生育が難しいのであろうか。
 カラスノエンドウは、カスマグサに比べて花は美しく果実〔さや〕はエンドウマメに似ているが、熟すと黒く(拡大してみると黒褐色の濃淡模様がある)なる。→花写真
 また、カラスノエンドウは葉のつけ根の托葉に赤褐色の腺点(密腺)が見られる。通常は花の中にある器官であるが、〔下写真〕蜜腺でアリを引き寄せて、葉を食べる昆虫を捕食してもらうためともいわれる。少し注意してみれば、蜜腺を巡って蜜を吸うアリの姿は容易に確認できる。
 牧野図鑑によれば、種子は食べられるというが、どのような味か試食してみたいものだ。サヤエンドウのように莢ごと食べるのか、種子を食べるのか。種子は、筆者の見る限りでは径2〜3mmで、筆者の子どもの頃に薬箱に入っていた仁丹の粒くらいの大きさである。

〔写真上・右上 2006.5.21寄合〕


                花期
 写真 2006.5.21寄合

         花のつくり

写真2006.5.21 寄合
        
              互生する葉

2006.5.21寄合

          果実期-鞘の中の様子

    写真 2020.5.12新田畑

               果実期

写真2020.5.26新田畑


              果実

 写真 2010.6.10 寄合

         残存ガク

 写真 2006.6.6 落合

                群 生
 写真 2012.5.1 上石黒

解 説
マメ科
 日本全国の道端や野原に生える一年草または越年草。別名ヤハズノエンドウ。全株有毛、希に無毛のこともある。
 茎は四角柱で(左下写真)つる状。多少地上に横に伏し、長さ150cmに達し葉の先の巻きひげで他の物に巻きつく。
 葉は互生し8〜16枚の巻きひげ羽状複葉で、偶数枚の小葉は、ほぼ対生し〔左上写真〕長さ23cmで先端はくぼむ。小葉の形は変化に富む。
 托葉は半分に切った矢じり形で中央に黒褐色の線点があることが特徴。これは花外蜜腺と呼ばれ、蜜でアリを呼び寄せ害虫を駆除するためのものとみられる。
 花期は3〜6月で花は赤紫色の蝶形花を葉のつけ根からでた短い花柄につける。径12〜18mmほど。ガクは2中裂し旗片は大きく、頭部は凹み翼弁は旗弁よりも小さく色が濃い。竜骨弁はほぼ翼弁と同じ長さ〔左写真〕
 果実〔豆果〕はサヤエンドウに似て長さ3〜5cm、幅5〜6mm。熟すとサヤは黒色となり2片に裂けて種子〔5〜10個、直径2〜2.5mm〕を散布する。
 名前の由来は熟した豆果が黒色になることをカラスにたとえたもの。


 
       茎断面

 写真 2009.5.8上石黒

        葉の形

写真2011.6.21 寄合

   カラスノエンドウとアリ
写真2006.5.21 寄合
 写真 2020.4.2 新田畑

      托葉の点線
2006.5.21寄合

       アリの吸蜜
写真2009.5.8上石黒

    葉の先の巻きひげ

2009.5.8上石黒

         種子

 写真 2010.6.10寄合
 写真 2020.5.31新田畑