ハッカ
暮らしとの関わり
 ハッカは、昭和20年(1945)代までの石黒では、大抵の家の周りに植えられていた。また、畑の端にも植えておく家もあった。
 筆者の生家にも庭先の小路脇に沢山生えていた。
 子どもの頃、真夏の炎天下で友達とハッカの葉を一掴みほど採って手の中でもんで顔や腕に塗って注射の前にアルコールを塗ってもらった時のような涼感を楽しんだ思い出がある。香りは現在のものより強かったように思われるが80歳を過ぎて嗅覚が衰えたせいであろうか。
注・清涼感は、爽快な香りと葉や茎に含まれているメントールの性質(体中にある冷たさを感じる受容体を刺激したり、常温で昇華するため気化熱を奪う)によるものだいとう
 今では石黒では希な植物の一つとなった。上の写真は落合の嶺山の農道脇で撮った。

※WEB上の情報によれば、1940年代前半までの日本は世界最大のハッカ油の生産地(7〜9割)であり、多くは輸出された。また、ハッカは2千年余も前に中国から渡来し、平安時代には貴族に山菜として好まれ室町時代には薬種として用いられた記録が残っているとのことである。
 現在、ハーブとして庭などに植えられているペパーミントは、花を茎の先端に穂状につけるので容易に区別できる。

(写真2007.8.16 落合)


           花期のハッカ

写真2007.8.16 落合
写真2010.9.9 大野

           花拡大

写真2007.8.16 落合

            葉の裏表

写真2007.10.16 落合

               群生

 写真2011.9.27 落合            


解 説
シソ科
 北海道から九州までの湿地や溝の縁の草地に生える多年草
 多数の長い地下茎(左下写真)を出して繁殖する。
 茎は四角形〔上・下写真〕で直立し高さ20〜50p。上方でまばらに分枝する。
 葉は対生し長さ3〜15oの柄があり〔左写真〕長さ2〜8p。幅は1〜2,5p。先はとがり縁には鋸歯があり表面にはまばらに毛がある。裏面には細かい油点がある(下写真)
 花期は8〜10月。葉の付け根に淡紫色の短い柄のある花を球状に群がりつける〔上写真〕
 花の色は白〜淡紅色。ガクは長さ2.5oで狭三角形で5裂し毛がある〔下写真〕花冠の長さは4〜5oで4裂し、上唇の先は浅く2裂する(下写真)。雄しべは4個、雄しべが長く雌しべが短い株とその逆の株もある。
 分果は扁平な楕円形で長さ約0.7o。
 全草に芳香があり、葉から香料、清涼剤、鎮痛、健胃剤をとった。
 日本では安政年間(1854)から栽培された。昭和に入り栽培が盛んになり一時は世界の生産額の7割にも達した。
 名前の由来は漢名「薄荷」による。



     四角の茎断面

写真2007.10.16 落合

   裏面の細かな油点

写真2007.10.16 落合

     2裂する上唇とガク

写真2007.10.16 落合

   5裂し毛のあるガク
 写真 2020.11.6 松美町

    全体の姿と長い根
 写真2007.8.16 落合