エゾタンポポ
暮らしとの関わり
 春を代表する花の一つである。
 タンポポは、昔から親しみの持たれた植物である。
 子どもたちは、花茎を何本もつないでホースにして水を通したり、種子を吹いて春風に乗せて飛ばして遊んだ。また、飼いウサギの餌にもした。
 現在(2005)、石黒では、セイヨウタンポポも見られるがエゾタンポポが圧倒的に多い。
 しかし、現在(2012)の故郷石黒では、エゾタンポポは減少しセイヨウタンポポが増えつつあることは明らかである。
 このように、山野の草木も、その時代の影響を免れることができず、その生態を年々少しずつ変化させている。そこに住む人々や暮らしの変化ほど大きくないにしても・・・。
 また、エゾタンポポなど在来の日本のタンポポの減少の原因としては、セイヨウタンポポの無性繁殖が可能、花期が長い、悪条件にも強いなど優位性が指摘されてきたが、最近の研究ではセイヨウタンポポの繁殖干渉による影響が大きな原因の一つであることが明らかになった。
 しかし、トウカイタンポポは繁殖干渉を受けないことが分かったが、新潟県に分布するエゾタンポポは実験の結果、どうやら繁殖干渉を受けるという結果が出たようだ。

(写真上・右上下2005.5.17上石黒 写真右下2005.5.26下石黒)


              花序が出る前か

写真2009.5.1下石黒

セイヨウタンポポとの比較
セイヨウタンポポ エゾタンポポ
セイヨウタンポポは、花の下のガクが反り返っているがエゾタンポポは反り返らない。しかし、そう果が開くころにはエゾタンポポもガクが反り返る。

        花期のエゾタンポポ1

撮影2006.5.25落合

          
花期のエゾタンポポ2

撮影2009.5.12下石黒

         痩果(そうか)の大きさの比較
 エゾタンポポ  セイヨウタンポポ
   
エゾタンポポに比べてセイヨウタンポポのそう果は小さく種子を遠くまで飛ばすことができることも増えていく原因の一つかもしれない。 

           種子散布期の様子

 写真 2019.5.22 下石黒
 
         タンポポの花柄で遊んだ思い出
 低学年の頃(1945前後)、空き缶に釘で孔を空け、そこにタンポポの花柄を差し込み、数本つなぎ合わせてホースを作った。缶は丈の高い桃缶が最適だった。缶を高い台の上に置いて水を入れると茎の先から勢いよく水が出る様が面白かった。また、仲間が近くに生えているタンポポの花柄を取ってきて次々とつなぎ、缶に水をいれると1m余も先から水が出る、それを見て皆が歓声を上げたものだ。こんな当たり前のことが不思議なことにも思われてとても楽しかった。
 当時は、ゴムホースなど日本中探してもない時代であったが、これがもしゴムホースであったら、興味は半減したであろうと想われる。
  (大橋寿一郎)
    

                    
解 説
キク科
 本州中部から北海道の山野に生える多年草
 根出葉の長さは15〜30p、幅2〜4p。形は浅くあるいは深く裂けた羽状で先端は三角状となる〔左写真〕
 花茎は高さ10〜20pで直立上方には軟毛がはえる。頭花は径3.5〜4p。総包は緑色で長さ1.5〜2pで開花時に花片に沿って直立する。総包外片は内片のおよそ半分長さで卵形で先は余りとがらない〔左写真〕。内片は細く長く先がとがり背面が黒味を帯びる。
 花冠は濃黄色で、周りの小花の長さは1.5〜2pほど。雄性先熟
 そう果の種子の長さは4〜5o、幅1.2oほどで長さ10oほどのくちばし〔冠毛の柄〕をもち冠毛の長さは6〜9o〔下写真〕
 夏には地上部は枯れて休眠に入り秋に葉を広げ越冬する。
 名前の由来は諸説あるが、果実穂が「たんぽ〔綿を丸めて革や布で包んだもの。稽古用の槍の頭につける〕」に似ていることからという説が有力である。
 ※セイヨウタンポポとの見分け方は左写真参照



   エゾタンポポのつぼみ

撮影2009.5.8寄合
  開花したエゾタンポポ

撮影2009.5.8寄合

    開花−花裏

撮影2009.5.8寄合

 花期の終わったエゾタンポポ
撮影2006.6.2下石黒

  総包と総包外片

撮影2009.5.13寄合

     果実期へ
写真 2019.5.22 下石黒

  エゾタンポポのそう果

撮影2006.6.2下石黒
撮影2009.5.12上石黒
 エゾタンポポ果実穂先端
撮影2009.5.8寄合