オオシロフベッコウ
暮らしとの関わり
 オオシロフベッコウという名前こそ知らなかったが、子どもの頃から、この昆虫の習性は何度も観察してきた。
 真夏の太陽の下、庭の地面で繰り広げられる何とも意外な展開に目を奪われて、熱さも忘れて見入ったものであった。
 自分の体の何倍もあるジョロウグモ〔石黒ではコガネグモよりジョロウグモが多かった〕を軽々と運び、途中で枯葉などの陰に隠しておいて、巣穴を掘る場所を探す、場所を決めて巣穴を掘り始めると実に巧みだ。巣穴ができあがると、かくして置いたクモを運ぶ、穴の直径からとても獲物は入らないと思って見ているとスルリと入れる。中は広くなっているのだろうか。後ずさりして引き入れてしばらくすると頭から出てくる。そして、掻き出した土で穴を巧みにふさいでしまう。一度目を離すと巣穴のあった位置は、人間の目では探すことはできない。
 子どものころは、獲物のクモは食べるためのものと思っていたばかりか、クモの体に卵を産み付けることも知らなかった。
 また、作業の途中にさかんに巣穴に近づき、追い払われている小さなハエが「ヤドリニクバエ」といい、巣穴周辺に自分の幼虫を落としてあわよくば巣穴に入れ獲物を横取りさせることをねらっていることなども、今、初めて知ったことだ。
 まさに、ファーブル昆虫記の興味つきない世界を垣間見る思いである。

写真上2006.9.24.上石黒

解 説
ベッコウバチ科
 本州、四国、九州、沖縄に分布。
 体長10〜17o。黒い体に淡黄色の縞模様がある。
 出現期7〜9月。大型のクモを狩る。習性は主にコガネグモ類をとらえて麻酔により仮死状態にして、土の中のの巣穴に運び、卵をクモの体に産みつけ幼虫を育てる。大きなクモを運ぶ速さも、固い地面に巣穴を掘る速さも驚くほど速い。
 名前の由来は羽の色がべっ甲色をしていることによると言われているが一見、羽の色は黒く見える。