イボタロウムシ
暮らしとの関わ
 イボタロウムシは、石黒では稀にしか見かけない。筆者が初めて石黒で見たのは2004年の秋、落合集落だった。その時は、木の枝に生えたカビのようなものではないかと思ったが念のために撮影しておいた。この写真がイボタロウムシを知る手がかりとなった。
 その後、やはり秋に出会ったのが上写真のアオモダの枝についたイボタロウムシである。この時には遠目にもイボタロウムシであることが分かった。その後、下石黒の山中でミヤマイボタについたイボタロウムシに出会ったが写真はない。
 2011年に、本サイトのイボタロウムシの写真を使いたいとの依頼が、「アラマタ生物事典」(講談社)の著者よりあったので、イボタロウムシの写真はWEB上にも少ないことを知って少し驚いた。
 ちなみにこの本は、いろいろな生物の不思議と、未来に向けた課題や可能性を語り、子どもにも大人にも楽しく読める一冊である。
 その後、柏崎市街地の自宅近くの排水路の土手に生えた、沢山のイボタロウムシの巣の付いたオオバイボタの木と出会った。この土手の道は私の散歩道の一つでもあり通る度にそれとなく観察してきた。
参考画像①  参考画像②  参考画像③ 
 昔は、このイボタロウムシの幼虫が分泌する蝋物質を「いぼた蝋」と呼び、ローソクの原料や戸の滑りをよくするために使ったという。現在でも市販され、日本刀の手入れや木工製品や銅製品のつや出しに使われている。
 今日(2014.11.26)夕方、久しぶりに藤元町にイボタロウムシを観察に出かけるとオオバイボタノキの葉はすっかり落ちていたが、イボタロウの白蝋はそのままの状態で残っていた。越冬する雌の貝殻はないかと探したが、道からでは見つけることはできなかった。しかし、撮影写真を見るとそれらしきものも認められた(左下写真)。降雪前にもう一度、近づいて観察してみたい。
 冬至の今日(2016.12.21)は、珍しく快晴で気温も15度℃と高かった。散歩の途中でイボタロウムシの様子を見にいくと秋の頃よりロウ物質は増えたように思われた。今日は夕方で出来なかったが次回には越冬する雌の貝殻はないか近くに行って観察したいと思っている。→写真
 今冬初めての寒波もようやく去り、今日(2017.1.18)は、久しぶりにイボタロウムシの観察に出かけた。雪の中のイボタロウムシの巣はあたかも枝に雪が付着しているように見えた。初めての人が見たらイボタロウムシの巣とは気が付かないだろう。→下写真
資料-冬のイボタロウムシ
 今日(2019.3.12)に散歩道のイボタロウムシの宿木が伐採されて跡形もなくなっていることに気づき驚いた。今まで、散歩の度毎の出会いを楽しみにしていただけに残念でならない。何度か、蝋物質を採取して「イボタ蠟」なるものを作ってみたいと思ったが、イボタロウムシに申し訳ない気持ちがしてできなかった。今後、オオバイボタの木は、切り株から新しい芽が育つであろうが、イボタロウムシは期待できない。
 今にして、もっと腰を据えた観察をおこなうべきであったと後悔されるが後の祭りである。切り取られたオオバイボタの株から出たひこばえが以前と同じくらいの大きさにに成長しているが未だイボタロウムシの巣は見当たらない。

 今日(2019.10.28)、古文書整理のボランティアで「蝋燭通帳-ろうそくかよいちょう」に出会った。その時の「蝋」の文字が極端にくずされ解読に手間取った。漸く解読に至ったが、ふと、なぜ「蝋」の漢字は木偏でなく虫偏なのかという疑問がわいた。というのは、今までの古文書に蝋燭の原料であるハゼやウルシの実を表す「里蝋」「山蝋」などの文字が多く見られたからである。
 そのことから、もしや最古の蝋燭はイボタロウムシの分泌した蝋物質で作られたのではあるまいか、と思ったのだ。
 帰宅後、調べて見ると蝋燭は、古代エジプトで紀元前1550年から使われていたようであるが原料は明らかではない。
 東洋では中国で前漢(紀元前206年ごろから使われたようだが、こちらは鯨油や蜜蝋が原料のようだ。そして、元(1270年-)になると、ボタロウムシの分泌物からも白蝋が採られるようになったとある。その製法は、新暦で8月末頃に採取し、直接または水中での加熱で精製するものだったという。
 その後、明(1368年-)になって、南方ではハゼなどの植物を原料としたろうそくが作られるようになったとある。
 日本で、蝋燭が最初に登場したのは奈良時代で、中国から仏教と共に輸入された蜜蝋であったと考えられている。その後、中国との交易が途絶えると平安時代には、蜜ろうそくに代わって松脂蝋燭の製造が行なわれたようだ。
 そして、室町時代(1375年-)になって、ハゼやウルシの実の脂を原料とする木蝋(和蝋燭)が誕生し明治時代にかけて広く使用された事が分かった。このことから、「蝋」が虫偏であることが納得ができた。

  (写真2007.10.28落合)

※オオバイボタにびっしりとイボタロウムシ
※オオバイボタとイボタロウムシ-画像原版
〇参考画像-原版画像
※県内外からイボタロウムシの画像の提供依頼がありますので、主なものを原画に近いサイズで掲載しました。
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               雌の成虫たち

写真2016.7.10藤元町

               雌の成虫
 雌の成虫-木から取りはがしたもの 中はすでに空になっていた 7.28
   


          雄成虫の拡大画像



           雌成虫の拡大画像)


撮影日2011.9.21 下藤井

                  雄成虫写真2014.9.9藤元町

       オオバイボタノキのイボタロウムシ

写真2014.9.9藤元町
写真2016.10.26藤元町

       1月下旬のようす-付着した雪のように見える


写真2017.1.18藤元町

              早春の様子

写真2018.2.28藤元町
解 説
カイガラムシ科
 
日本全国に分布するカイガラムシの一種。
 主にモクセイ科のトネリコアオモダイボタなどの木に1年1回発生し成虫で越冬する。
 冬芽近くで越冬する雌の成虫は楕円形で背中がふくらみ成熟すると径1㎝ほどの紫褐色の球形の貝殻(下写真)をつける。 
 5月頃に貝殻に数千個の卵を産み6~7月に孵化する。そして、雄の成虫が枝に分泌し付着した白色の蝋物質の中でサナギとなり、9月頃に羽化して白蝋に小さな穴(下写真)を開けて外に飛び出す。
 イボタロウムシによる樹木への被害は、ほとんどないと言われている
(筆者の5年間(2014-2018)の観察によれば、株立ちしたオオバイボタに見られる若干の影響はイボタロウムシの分泌物が多く付着した木は、他の他の木に比べて葉や花のつき方は少ない)

 名前の由来は、
蝋としての利用のほかに、皮膚にできた疣(いぼ)をとる薬効があったため「イボトリ」と呼ばれそれが転化したものではないかと言われている。


     オオバイボタノキ

 写真2014.9.9藤元町

   雌の成虫が作る白蝋の巣

 幼虫あるいは蛹(巣を壊して撮影)

    成虫の出た穴

撮影日 2011.9.21 下藤井

       羽化直前

写真2014.9.9藤元町

        雄の成虫
撮影日2014.9.9藤元町

  越冬のメスの貝殻らしいもの

写真2014.11.26藤元町

     3年前から見られる

写真2016.7.5藤元町

     白色の蝋物質


写真2016.7.10藤元町

 樹皮一面につけられた幼虫

写真 2016.7.28 藤元町

   11月ころの様子
写真 2014.11.26 藤元町

        早春の様子

写真 2018.2.28藤元町