ハルゼミ
 ハルゼミの鳴き声
暮らしとの関わり
 石黒では、生息数は昔から少ないセミであるが、近年ではほとんど鳴き声を耳にすることもなくなった。
 筆者は、子どもの頃から遠くからの鳴き声は聞いたものの姿は一度も見たことはない。(上写真−高柳の自然から借用したもの)
 ハルゼミはある程度の規模の松林に生息するとされるが、 もともと、石黒はマツ(アカマツ)は少なかったのだが、昭和の終わりごろの松くい虫の大発生で、そのほとんどが枯れ死してしまった。残った松は、一山に2〜3本というありさまであった。このような環境の変化が石黒地区ではハルゼミの絶滅を招いたものであろう。
 松くい虫の被害は市街地周辺の山にも及んでいるために市内全体に激減していることは間違いない。
 ちなみに、かつて市内の矢田集落から吉井集落に至る左手、当時「東京屋」という商店があったあたりの小高い山の斜面の松林はハルゼミの大群生地であった。現在では道路改修が行なわれて松も伐採され当時の面影もないが、相当な規模の松林でハルゼミの大合唱を聞くことができた。
 石黒では、ハルゼミの鳴き声は単独で、遠くから風に乗って聞こえてくるような具合であり、忙しい田植えが終わりほっとするころに耳に心地良いものであった。そして間もなく鳴き声は、ニイニイゼミにかわり、アブラゼミヒグラシミンミンゼミエゾゼミなどと変わって本格的な夏の到来となった。


解 説
セミ科
 日本では本州、四国、九州に見られる。日本以外には中国に分布する。
 成虫の体長はオスが28〜32mm、メスが23〜25mmとヒグラシを小さくし黒っぽくしたように見える。翅は透明で外は黒色から黒褐色。
 生息場所はある程度の規模の松林であり松林の外に出ることはなく生息地は限れている。
 鳴き声は「ゲーギョー、ゲ゛ーギョー」と聞える。
 名前の由来は春に成虫が発生することによる。
 全国的に松くい虫による松の減少や農薬散布による生息数の減少は顕著であり絶滅危惧種に指定する自治体が増えている。