ニホンミツバチ
暮らしとの関わり
 石黒で見られるのはミツバチは、ニホンミツバチがほとんどである。木のウロや墓の納骨室、山小屋の中などに巣を作る。
 分封(巣分れ)の様子もしばしば目にする〔→参考ビデオ〕。それは、まるで黒い煙が猛スピードで移動するようで目にもとまらぬほどの速さである。それが、木の枝に固まりとなって垂れ下がって休んでいる様も見たことがある。
 また、筆者は、山小屋の庭に造ったテーブルの箱状にブロックを並べた台部の中に巣をつくったミツバチを数年にわたって観察したが興味深いものだった。
 中でも毎日やってくるスズメバチに勇敢に立ち向かう姿は忘れない。近寄るスズメバチに横隊を何重に組んで向かう。しかし、恐れをなして後ずさりするもの、前の蜂を後押しするもの、必死の様がうかがわれる。(筆者はテーブルの近くには専用のハエ叩きを置いてやってくるスズメバチを駆除していた)
 また、筆者の畑の農具小屋の二階に、天敵スズメバチと隣り合わせて作られたミツバチの巣にも驚いた。→〔写真参照〕
 発見の発端は、スズメバチの巣に気がつかなかった筆者が朝、農具を取りに小屋に踏み込んだ途端に腿を数カ所刺されたことだった。蜂刺されには子どもの頃から慣れていたので1日中農作業をして帰宅したところ夜になり脚が腫れて、立っていることも出来ず救急病院に行く羽目になった。
 翌々日に筆者は、すべてのスズメバチが帰巣する夜を待って、完全武装して巣の作られていた小屋二階に上がり巣を懐中電灯で照らしてみて驚いた。スズメバチの巣と並ぶようにミツバチの巣があるではないか。間違いなく、スズメバチの巣の方が後でつくられたものであろう。ミツバチの巣の真下には飯茶碗に一杯ほどの死体が落ちていた。
 (その後、テレビでの放送を見て分かったことだが、ミツバチは、侵入してきたスズメバチを球状に取り囲み熱殺するのだという、)おそらく、そのおびただしいミツバチの死骸はスズメバチとの壮絶な戦いで犠牲となった蜂であろう。
 まず、ミツバチの巣を丁寧に採ってハチをつけたままの状態で小屋の外に置いて戻ってから、ハチ専用の殺虫剤をかけてスズメバチを駆除した。
 翌朝、確認したところスズメバチの死骸は比較的少なく100匹余りであった。
 採ったすミツバチの巣は、その時に小屋の外で待機していてもらった村の知人に進呈したが、意外に蜜は少なく巣内に5匹ものスズメバチが進入していたとのことであった。
※2003年のことで、HPの石黒の動植物の制作前のことであり十分の観察をしなかったことが悔やまれる。
 多くのハチは人を刺すため嫌われる昆虫であるが、ニホンミツバチは手でつかんだりしない限り刺すことはなく、子どもの頃からハチの仲間ではマルハナバチとともに特別扱いのハチであった。

参考写真 ニホンミツバチの木のウロへの移動の様子

ビデオ-3mの残雪の中で活動開始したミツバチ

ビデオ資料-ビワの花で吸蜜するミツバチ-2019.12.11




解 説
ミツバチ科
 北海道と沖縄を除く日本各地に分布する。
 セイヨウミツバチ〔上写真右下〕に比べやや小さく体長〔働き蜂〕約13p。体色は全体がセイヨウミツバチに比べ黒っぽい。正確な区別は羽脈の違いで行う→下記図参照

〔引用HP「にほんみつばち」http//homepage3.nifty.com
/jhp/seiyou.htm〕
 現在養蜂のセイヨウミツバチのいない山間部の樹木の空洞などに数枚の巣を並べてつくる。
 セイヨウミツバチは野生化することは少ない。ミツバチの生活は、女王蜂、雄蜂、働き蜂の3種で営まれる。女王蜂は交尾と分封の時以外は巣内に留まって産卵に専念する。
 産卵能力は高くT日に千個以上の卵を産むことができる。女王蜂は王台(おうだい)と呼ばれる特別の巣房で,王乳(ローヤルゼリー)で育てられる。
 雄バチは春の生殖の時期だけに現れ,羽化した新しい女王バチと空中で交尾をする。
 働きバチは,女王バチと同じく雌ではあるが,産卵能力がなく,もっぱら労働に従事する。
 ニホンミツバチはセイヨウミツバチの導入により減少が見られ、種としての存続が懸念されたこともある。
 別名アジアミツバチ。

 私が高校を卒業した年の秋であった。母方の祖父の家の庭にあった樹齢数百年と言われた梨の大木が台風で倒れた。幸い家屋には被害がなかったが、倒木の処理にはチェンソーもない時代で手間取った。その木の根元から1mほどの洞の中にミツバチが巣をつくっていた。倒木処理の手伝いに行った私は、その時初めてミツバチの巣を間近に見た。祖父は私が取り出したミツバチの巣を晒し布に包んで絞り蜜を取り出した。大きな丼皿に一つほどのハチミツが採れた。この時、私は生まれて初めてハチミツというものを食したのだったが美味しいとは思わなかった。巣の匂いか何か分からないが一種独特な臭いが気になったことを今も憶えている。