DDTについて
 DDTは、スイスのミュラーによって発見され、1940年代とくに第二次世界大戦前後から殺虫剤として大量に用いられるようになった。
 その後、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」の出版(1960)を機に自然環境への悪影響があること等が明らかになり、日本では1971年に使用が禁止された。
 しかし、現在、使用を禁止していない国も発展途上国などに多い。また、最近の研究によって少なくともヒトに対しては発癌性はごく少ないことがわかり2006年、WHO(世界保健機構)は「マラリア蔓延を防ぐため、流行地でのDDT使用を推奨する」という声明を発表している。とはいえ、野生動物への蓄積や人体へのリスクなども考慮し、「家の内壁や屋根にスプレーしておく」という使用法に限定している。
 筆者もDDTを頭からかけられた世代であるが、敗戦前後の石黒で、ハエやノミ、シラミの駆除には画期的な働きをしたことを体験している。
 このようにDDTには環境汚染の事実はあったにしても、その功績はイタリアにおけるマラリヤ撲滅など世界に共通して認められいる。

 ちなみに、発見者ミュラーは1948年のノーベル医学生理学賞を受賞している。
    (文責 大橋寿一郎)