民具補説
              畳の思い出
 昭和20年代の中頃、私が子供の頃の村には畳を敷いている家とムシロの家がありました。畳は「ヤロウドコ」といって縁に布がはっていない畳でした。
 20年代後半の小学生の頃に、田麦方面から畳屋さんが来て何日か泊まり込みで畳を仕上げるのを見たことがありました。その時の畳は「ホンドコ」と言って縁に黒い布をとじ針で縫い付けてゆくのでしたが子供心に力が要りそうな仕事だと思いながら傍で見ていたものでした。出来あがった畳は今までの畳(ヤロウドコ)よりガッチリ硬く感じられ、見た目もりっぱでした。ですが、その畳はある部屋の片隅に立て掛けられたままで普段敷くことはありませんでした。冠婚葬祭やお正月用の畳だったのです。
 毎年暮れの大掃除(すすはき)が終わって真新しい畳が座敷やデー(奥座敷)に敷かれると、一気にお正月気分が高まりワクワクしたものでした。ただ、どの位の重さだったのか、この畳は大人になってからもやたら重く感じられました。
 時代が変わっても畳が恋しく畳のある部屋が落ち着くのは私だけではないように思います。
          文 大橋洋子 (大野出身−福島県在住)