民具補説    
       衣服や縫い物に使ったコテ   
 女衆が継ぎ物で使うコテは、平ゴテで割合に薄く幅の広いものでした。コテは囲炉裏の火でちょうど良く熱して羽織やハカマの形を整えたり、反物で着物を縫うとき縫うところを折り曲げてそこにあてがってキチンとした縫い目をつけるために使いました。
 小学校の冬季分校で私の母が、週に一度4〜6年生の女子児童に裁縫を教えていましたが、その時も平ゴテをストーブで温めて使っていました。温めた平ゴテで布に折り目をつけてから女子児童が縫う練習をしていたのことを憶えています。 
田辺雄司(居谷)

    子どもの頃にコテでスキーにロウを塗った思い出
 コテと言えば、子どもの頃スキーにローソクを塗ったことを思い出します。家人の目を盗み仏壇から、西洋ローソクや和ロウを持ち出しました。そして、コテを囲炉裏のホド(火床)に入れておいて熱くなったころを見計らって、トマグチ(土間口)で裏返しに置いたスキーに塗るのでした。熱く焼けたコテでロウを塗る時には「ジリジリ」と音がして油煙が立ち上ったことを憶えています。西洋ロウソクの方が和ロウよりもスキーがよく走りました。
 中学生になった頃(1953年)に、ようやくスキーパラフィンやスキーワックスが手に入るようになりました。
 (大橋寿一郎)