民具補説 箱 枕 私の子どもの頃にお盆過ぎから秋祭りまでの1ヶ月間隣村から7〜8人の田堀人足がやってきました。大きなワッパにご飯をつめて、細い縄で編んだ袋に入れて持ってきました。そのワッパご飯はお昼に半分食べて残りは午後4時頃になると中食(ちゅうじき)に食べるのでした。 お昼は私の家で食べるのでしたが、食後の昼寝にはこの箱枕を使っていました。 当時の人たちは箱枕は首の下に隙間ができるので夏場は涼しくてよいと言っていましたが、若い人にはとっては、なじまず、かえって首が痛くなると言われていました。 箱枕は台形の台の上に小さな枕をくくりつけたものですが、子どもの頃に試しに使ってみましたが本当に首が痛くなる枕でした。 当時、出稼ぎから戻って来た人たちが、新聞紙一枚ほどの江戸絵双紙のようなものを土産にくれたものですが、それに女の人が箱枕をしている絵がありました。 私は、東京の女の人はみんな箱枕をしているのか、と祖父にたずねたところ「箱枕をしているような女は毎日遊んで暮らしているんだ」と、さぞ軽蔑するような返答でした。 箱枕は花柳界から流行り始めて一般に普及したもので、もともと日本髪を結った女性が主に使ったものであることを知ったのは大人になってからでした。 私たちが大人になる頃に(昭和20年以降)は、箱枕は多くの家にありましたが使う人はほとんどなかったように思います。 ![]() 文・図 田辺雄司(居谷) |