消息往来    (大橋一成家文書)  用語の手引き
   音信 
 
芝泉堂先生書
増字 消息往来
東都書林 泉柴堂梓


消息往来
おおよそ、消息は、音信を通じ、贈答
安否、近所、遠国長途、
何事に限らず、人間万ず用達也
   一翰→1通の手紙

 ※
は紙の異体字



剪紙
 
基なり。先ず書状案文、手紙
取り扱い文字一筆、一翰、一書
啓上啓達せしめ啓をもって手帋
得て御意申し入れ尊書、尊翰

尊札、貴翰、貴書、貴墨
貴札、御札、御状、芳墨、芳札
芳簡、御紙面、御切紙、御紙上
御紙表、拝見、拝誦、拝見
  孟夏


※不勝→
すぐれざるとも読む
 
披見、被閲いたしせしめ仕り候、扨(さて)又
時候は正月、春陽、春寒
余寒未だ退き難く、去る二月
仲春、日を追って春暖、暖気

相催し、三月弥生、長閑(のどか)の節
四月、孟夏、薄暑の節、五
月、入梅、不勝(ふしょう)の天気、或いは
皐月、暑を催し向暑の節
  土用


 ○林鐘


夷則


南呂


玄英
 
六月、林鐘、暑中、土用中
甚暑、大暑、酷暑、極暑
耐え難き土用過ぎは、残暑強く
凌ぎ兼ね、七月、夷則、未だ残暑

去り難く、秋暑強く或いは涼しく秋冷
相催し、八月、南呂、稍(やや)涼しく、九月
季秋、冷気相募り、朝夕
相増し、十月、玄英、寒冷
   
                       消息往来について
 往来物の一種で著者は未詳。内容から室町時代初期の作といわれている。右筆寿哲が文明18年(1486)に書写したものが唯一の現在伝わっている写本であるといわれている。
 賀茂参籠の後に招きたいと申し送る書状、四天王寺の塔供養に同道するように誘う書状など5条・9通より構成される武家用の書簡の手本である。
 また、巻末には日常生活にかかわる単語集である「異名尽」を掲載する。なお、江戸時代になると、書簡文に常用される単語・短歌・短文を集めた「用語分類消息往来」(安永7年-1778)をはじめ、「消息往来」の名前を付して公刊された往来物の数はおびただしいものであった。
 特に寛政5年(1793)に高井蘭山が編集刊行した「
凡消息者 音信を通 近所遠国 不限何事 人間万用を達之元也」で始まる「消息往来」は、版を重ねて流布したのみならず、多くの類書を輩出して往来物そのものの発展普及に大きな役割を果たした。(参考文献-国史大辞典)
 
 
読み下し文他文責 大橋寿一郎