風月往来  (大橋一成家文書)  用語の手引き
   
 


風月往来  完


風月往来
新春の御慶賀
重畳(ちょうじょう)申し籠め候畢(おわんぬ)
 ○畢←おわんぬ
   ※子の日の御会→平安時代、貴族たちは、正月初めの子の日に野遊びなどして行事を楽しんだ。小松の根引きや若菜摘みなどが行われたが、これらは年頭にあたって,松の寿を呼び寄せたり、若菜の汁物を食して邪気を払おうとしたものと思われる 


言語道断→仏語。奥深い真理は言葉で表現 できないこと


宗匠→文芸・技芸などの道に熟達しており、人に教える 立場にある人。特に、和歌・連歌・俳諧・茶道・花道などの師匠

兼題→歌会・句会などで、 題をあらかじめ出しておいて作るもの。また、その題。⇔席題。
 
そもそも、子の日(び)の御会、忘れ
難く存じ候、今に始めざる
事に候と雖も、御歌の風情

言語道断に候、兼ねて
又、宗匠家より
兼題出され候、所謂
  題面→筆者は意味理解不可
◎「次句を承け、先ず題面を說明し、承尾に至りて始めて破[題]中の首句を承け章旨と題意とに說き入るべし。[そして破題 ... て、下句で題面を破くようなものであれば、その破承 (承題)の開口(書き方)は、破題の下 句を承けて題面を説明し(後略)」という記述が見られる。
(清代八股文における破題・承題の作成法について-滝野邦雄著)


同心→心を一つにする。賛同する。
 

心事→心中。心の中で思っていること。
 
遠山の雪、霞中(うちゅう・かすみのうち)
松、門、楊の風吹(ふうすい)これ
等(ら)題面遊ばさるべき

の由、申され候、返す返す
面白く覚え候、定めて御
同心候や、心事
  期す




御札→ギョサツ-敬って呼ぶ他人の書簡
 
併しながら、参会の次いでを期す
恐々謹言
正月十一日

御札委細拝見
仕り候畢(おわんぬ)、そもそも愚庭の
梅花、紅白交え枝
        (以下略)
 
                         風月往来
 作者及び出版年不明。
 本文は古往来の「十二月往来」を模範型として1月から12月までの各月ごとに行事や風雅な季節の移り変わりを趣深く表現された文章が2例ずつ文例として編集されている。
 往来物の研究者、石川松太郎の分類によれば、風物往来は消息類・消息文例型に該当するとされる。
 風月往来は、とくに幕末から明治に至るまで多くの版を重ね普及したとされる。消息類とは手紙往復文の雛型といえるが、消息文例型とは手紙の模範文・模型文を集めて往来物として編纂したものである。
 それに比べ、、風月往来は内容編集形式においても「十二月往来」を原型ないしは範例として、1月から12月までの往復の手紙文で構成されている。
 範例とされた「十二月往来」は、『群書解題』によれば平安時代末期の教科書であるとされ、作者菅原道真、中山忠親、後京極良経など諸説あるが不明とされる。成立年代も古く、12世紀頃と推定され朝廷や寺社の行事についての手紙文例がその内容である
 
 読み下し・用語の手引き文責 大橋寿一郎