ひとらごと   DATE20201010

 

             「イチジク」を育てて
                       大橋末治
 昭和20年代の石黒には、イチジクの樹はあったのだろうか? 私には、イチジクを食べた記憶がない。可成り前になるが(50歳代中頃)定年後の楽しみにと、義母にイチジクの幼木を頂き庭に植え、その樹が実を付けたことがあった。樹の成長は速く、直ぐに実が付いた。その実はジューシーでとろけるように美味しく忘れがたいものとなった。その上、持病の痔に効くとあってことのほか喜んでいた。しかし、イチジクの樹には、強敵カミキリムシの幼虫が大発生し2〜3年で全滅してしまった苦い思い出がある。

その後、熊本に勤務したこともあり20数年の空白の年月が経った。ここ数年前から、
再び思い出したようにイチジクを栽培してみることにした。栽培と記したのは1本でなく数本育てシーズンで千個以上の収穫となったので、少々大げさに記させて頂いた。お手本は通信教育受講、市主催の果樹育成講座参加、近所の農家の方々の親切な助言等で、何れも大変役立ち感謝している。イチジクを友人・隣近所に配り、「完熟で、しかも採りたてで店頭のものより・・・(方便と知りつつも)」と喜んで頂くのも大いに励みになった。

イチジクについては、ご存知の方も多く、蛇足と知りつつ、にわか勉強の結果を記させて頂きます。ご容赦下さい。イチジクは「無花果」とも書く落葉樹。イチジクの花は「隠頭花序(いんとうかじょ)」と呼ばれ、実の中に無数の白い花を付け、花弁が外から見えず、花が咲かないように見えることから、「無花果」という字が当てられた。また、イチジクの語源としては、一晩で熟してしまうので「一熟」、イチジクの中国語の「映日果(インリークオ)」の発音から呼称されるようになった。と言われているようです。また、聖書に出てくるアダムとイブが最初に食べた果物は、一般にりんごと言われているが、イチジクであったという説も強いようです。

 イチジクの樹は生育が速く、病害に強い。成果物への確実な期待が望めることも大きな楽しみである。老婆心ながら、イチジクに興味のある方のために、今までに得た育成時に気付いた拙い知識を数点記させて頂きます(一般には、ハウス栽培されており要らぬお世話なことばかり!)。後期高齢者に免じ、ご笑読頂き、ご指南・ご教授頂ければ幸いです。

1. 第1の敵は、カミキリムシ
対処法:収穫後剪定除外する幹(根元側)を除き防虫(又は鳥)網で幹が見えなくなるまで覆う(幹に卵を産み付けさせないことが肝心。当初、幹に石灰を練り塗布/手間がかかり効果に疑問、テープや布で覆う/幹の途中から根が生える、など試行するも断念)。
2. 第2の敵は、鳥害(カラス、ヒヨドリなど)
対処法:防鳥網で全体を覆う。実の数が少なければ紙袋で1個ずつ包む。(農家の方の弁:以前は簡単な細工で防御出来た。最近のカラスは親の教育不足で怖がること知らない。利口なカラスは、簡単な細工でも敬遠する、とのこと)。
3. 第3の敵は、強風
対処法:樹の成長は速く高く大きな葉が付き全体として弱い。支柱で対処。
4. イチジクの不思議
1) イチジクの葉は、交互に出る。その葉の付け根には、決められているように確実に実が1個ずつ付く(稀に例外もあるが)。
2) 各枝で最初に熟すイチジクの実は(当地では「ハナ」と呼んでいる)一番下部に付く。その実は大きく成長し、特段に美味い。
3) イチジクの実は、決まったように下段から順番に熟す。柿やミカンのように一度に熟さない。環境条件(温度、湿度等)が合えば毎日1(個/枝)ずつ収穫可能。 駄作を一句:“イチジクや 並んでみごと 隊の縦列”

4) イチジクの実の採り方で果汁(乳のような汁)の出方が異なる。根の部分をしっかり掴み根部から採ると果汁が出ない。
5) イチジクの実(花)には、種が出来ない? それにしては、何のために、このような立派な実を付けるのだろうか? 子孫はどのようにして増えるのだろう? 実際には、根部からは新芽だがどんどん出るし、挿し木によっても、どんどん増やすことが可能。
6) イチジクの種類は数種あり、味も異なり収穫時期も幾分ずれているようである。何れの種類も前述のように一個ずつ順番に熟すので長期間(6月から10月位迄)の収穫が楽しめる。
7) イチジクは、低カロリー(約54kcal/100g)で栄養・美容・健康(便秘解消、消化促進、高血圧・貧血・骨粗鬆症予防など)に役立つことは、皆様ご存知の通り。多量収穫時は、乾燥イチジクやイチジクジャムへの変身も可能。

                    (2020.10.10)