ひとらごと   DATE20180607

 

             急がば回れ!!
                  大橋末治(180606)

 5月6日、日大のアメリカンフットボール選手の悪質なタックルで不祥事件が発生した。これに関する詳細は、連日、各報道機関で報じられているので、割愛させて頂くが、責任者の対応のまずさ、往生際の見苦しさが、何とも寂しい。監督が「白」と言えば、「黒い」ものも「白」になる指導現場であったとのこと。

 一方、たまたまTV出演されていた青山大学の箱根駅伝大会で今年も優勝させた原監督の弁が耳に残った。監督は無名のチームを就任後5年(?)で一躍優勝するチームに育成し脚光を浴びている監督である。そして現在4連覇中でもある。司会者の「これほどの短期間に強力なチームに育成された秘訣は何ですか?」との問に、監督曰く、「〇〇力」です。とのこと。「〇〇の中に入る言葉を考えてみて下さい」とのことで、忍耐、辛抱、持久、精神などと自分なりにも考えてみたが、歯を食いしばって頑張る箱根駅伝には、厳しさに連想される言葉が重なった。
しかし、監督の口から出た言葉は意外な言葉であった。「会話」、即ち会話力であった。チーム内の会話は、特に重要とのことで、テーマは自由、当番制発表の場も作られていた。チーム間の円滑な会話が展開するようになると監督の出番は徐々に少なくなり、自然に選手同士で情報や意見の交換がされるようになるという。勿論、これだけのことではないと察せられるが、自主性に目を向けられた監督の眼には普通の監督ではない鋭さが感じられる。
 監督は電力会社の営業マンであったとのこと。仕事を通して培われた「人をその気にさせる眼の付け所が並でない」。先を見定め「急がば回れ」である。

 会社勤めの頃「新製品を開発するには10年かかる」と言われていた。それには、市場調査、基礎研究、基礎試験、確認試験、実証試験など様々な過程があり、この開発期間を如何に短縮するかが重要課題の一つであった。たまたまボーイング社との共同開発プロジェクト参加の機会に恵まれた。日本では少ない実験データを丁寧に取得し、念入りに結果を解析・検討していた。一方、ボーイング社では多くの実験データを大量に取得していた。まさにこれは「量産している」と言っていた。近年は計算機による解析が進歩し、机上でも実験範囲が絞られるので開発期間は短縮されていると思われる。しかし、解析は広範囲・高精度となり開発機関の悩みは何時になっても尽きないものと察せられる。ここで重要なことは、予想に反して取得されたデータの取扱である。現場では、予想に反して現れたデータは、それも立派なデータである。例え失敗したデータであっても貴重なデータの一つである。と教えられていた。

 最近の政府機関・大企業でのデータ改ざん事件は目に余るものがあり、実に残念なことである。それも再発している。国会での官僚が作成した文章を読み交わす質問・答弁を聞くに付けても、国・企業など個々のシステムとしての「会話力」の向上が不可欠ではないか、などと原監督の言葉が気になっている。