ひとらごと   DATE20160429

 

               

     想定外は許されない!

               大橋末治(2016.4.28)

「熊本では大変なことになっていますね。」と私が尋ねると、「今、家に帰ってきたところです。家内と子供たちは余震がひどく恐怖のため車中泊しています。家の中ではあらゆる物が散乱し手のつけようのない状況です。アッ、今、また揺れ出しました」と返ってきた。これは地震発生後、1週間ほど経て電話が初めて通じた時の熊本市内に住む友人との会話である。また、家が有明海沿岸に近い友人のお話では、「当初は、デマに惑わされてしまった。最初の地震時“津波が来る”とのデマがあり、車で逃げた。しかし、高速道路は通行止めとなり、一般道路は避難車で瞬く間に大渋滞、長時間動くことさえできなくなった。5年前の東北地方の津波による大被害の影響で、住民は想像以上に“ツナミ”に敏感になっている。とっさの時の行動は“徒歩で近くの高地へ”が基本と言うことを改めて感じた」とのことであった。

 私は9年前迄、熊本県でお世話になっていたこともあり、現在も付き合が続いている友人も少なくない。幸い、電話が通じたご家族は、全て安全が確認されホッとしている。しかし、家屋の破損を始め精神面の打撃は計り知れないと感じている。震災後2週間を経た現在、新幹線が開通したと報じられている。これを機会に被災地域への支援も大いに活発化し、一日も早い復活を心から祈っている。

 鹿児島県に近い地域の友人は、日本で唯一の現在稼働中である川内原発を大いに気にしていた。東日本大震災時「想定外」とされた福島原発被害は、現在も尾を引いており記憶に新しい。実際に地震現象(波動)が把握されていた今回の熊本地震でも気象庁は「余震」と「本震」の判断さえ誤った。震度7クラスの地震が続くことは初めてとのことで想定外だったという。「想定外に対する感覚が鈍くなっている」と言わざるを得ない。

 「地震と火山活動や原発の制御・廃棄技術」などは、現在の科学技術レベルで制御可能な範疇を大きく越脱しているものと思われる。東日本大震災時、「トモダチ作戦」で事故発生直後から現地支援に駆けつけてくれた300人を超える米国軍人が現在も重い被曝症状を訴え控訴・療養中とのこと。また、30年経過(19864月発生)したチェリノブイリ原発事故では、隣国のオーストリアの森林に住むイノシシの肉に4,711ベクトル/kgの放射性セシューム137が検出されている。日本では、肉など一般食品の放射性セシュームの基準値は100ベクトル/kgと定められている由。日本の基準値の50倍近い値である。国内事情を見ても、未だに原発廃棄物の処理さえ宙に浮いている始末である。これらは原発事故後の対応が如何に困難であるかを如実に示している。  

 日本は火山列島で地下には地震と連動する活断層が張り巡らされているという。政府の地震調査委員会が公開した2014年版の全国地震動(30年以内に震度6弱以上)予測地図によると、今回発生した熊本地域の地震発生予測は8%と低く注目されていなかった。一方、北海道から四国に至る太平洋沿岸のほとんどの地域が26100%と高い値を示している。注目されていない熊本地域の地震発生が現実として実証している如く、現状技術で自然現象を明確に予測することは不可能である。低い確率でも厳重な警戒は避けて通れない。「科学的根拠がない限り川内原発は“停止”しない」と原発関係者は言っている。「科学的根拠がない限り川内原発は“開始“しない」が正当であろう。誰も正確な科学的根拠など提示できないし、もう、「想定外は許されない」。

以上