ひとらごと  DATE20141209

            子供に接して

                   大橋末治

 数十年来、自由に遊ぶ子供と接したことがなかったが、ひょんなことから子どもの一面に接することがあり、何故か頭の片隅に残っていることがある。
 我が家の東・北側エリアには、ミカン畑や田んぼや野菜畑がある。小さな林もあり、この林を抜けると周囲300mほどの池があり、竹林につながっている。昔はこの池で子供たちが泳いで遊んでいたそうである。
 しかし、現在は危険防止のため、池の周りに1.5m位の金網製の冊が設置されている。一方、西・南方面は、年々宅地化され若い世代の人口も増えつつある。勿論、遊び盛りの子供も多い。自由闊達に遊ぶ子供たちは実に頼もしい。

ある時、私が池の周りを散歩していると、小学校上級生位の2人の男の子が冊を飛び越えて出てきた。一人は冊の金網の端で、右手に傷を負い半分泣き顔になっていた。血も出ておりおろおろしていた。近くを見ると冊の当たりにヨモギが生えていた。私はとっさにヨモギを採り、手でもみ柔らかくした。そして子供の手を取り消毒のため少し血を絞り出し子供の患部にヨモギを当ててやった。そして「これで血も止まるし、大丈夫だよ」と言った。子供は小さく頭を下げると飛び去るように視野から消えた。何処の子か知らない。相手も同様「変なおじさん」と思っていたことだろう。
 それにしても、半世紀前の石黒村での体験が、こんなところで役立つとは分からないものである。その後、5年くらい経つがその子供とは会っていない。

暖かいある日のことだった。我が家の垣根の草取りをしていると、小学校低学年の女の子たちが「ままごと」をしている話し声が耳に入った。大きな声なので自然に耳に入ってきた。それぞれの家庭内の日常生活のことが伺われるような場面が多く「子供は家族の日常生活を良く観察しているな」と感心していた。
 一通り済んだのであろう。一人の子が、次は「変なおじさんごっこをしよう」と言い出した。「誰がおじさんになる?」などと役割の相談が始まった。これは面白そうだと思っていると「おやつはどう」と家の中から母親がさえぎってしまった。子供たちの「ままごと」の進展が気になり割って入ったのか、真意は知る由もないが、もう少し先が聞きたかった。最近の「オレオレ詐欺」などが再現されるのだろうか? それとも変なおじさんは自分では・・・?

半世紀前頃の「ままごと」では「後は、愛情だけ」と言って鍋の蓋を取り「ふっ」と息を掛けるのを聞き、大いに感心したり驚いたりしていたのが懐かしい。

                 2014.12.6