TPPと石黒の農業
今日(2013.12.10)の新潟日報に、TPPに関する農業分野の次のような記事が見られる。
○TPP交渉越年へ−難航分野、隔たり大きく
○「十日町市、農家所得12%増しと試算−減反見直し補助金活用で
○農地機構設立に400億円−農水省13年度補正で前倒し
これらの記事から、「TPP交渉は難航しているが、政府はすでに農業政策転換の舵を切っており、農家もこの大きな変革に対処する態勢に入りつつある」ということが分かる。
いずれにしても、日本の新たな農業政策の基本的な方向は、農地の集約による大規模化による生産力向上であり、TPP加入による日本農業の再生であることは言うまでもない。
だが、その実現までには、様々な問題や障壁があるだろう。
当面のTPP交渉でも、参加各国が自国の利益を主張し妥協の見通しさえ立たない。お互いの譲歩なくしては交渉妥結はおぼつかない。結局は、日本も聖域とする米についてもアメリカに一定の譲歩をしなければならないことになるのではなかろうか。
そうなると、交渉妥結後は完全実施までの猶予期間10年ほどの間に、政府は実効性のある政策を着実に実現していかなければならないことになる。その過程での農業政策が石黒のような山間地の農業にどのような影響をあたえるかが憂慮されるところだ。
さて、政府は、来年度から経営所得安定対策(報道では減反補助金と表現されている)を現行の10aあたり15,000円から半額減の7,500円とし、2018年度には廃止する方針と発表した。
それに代え、飼料米栽培への補助金を来年度から3割増の105,000円(現在8万円/10a)まで増やす方針だという。
また、それとは別に、石黒のような山間僻地においては、平野部との生産コストを補うものとして中山間地域直接支払交付金があり、現在10aあたり21,000円が交付されている。
新聞報道によれば、それらの現行制度を見直し、新たな「日本型直接支払」として創設することを予定しているとのことである。
その目的は、「農地を守る活動や、農村の環境を良くする取り組みの支援」としている。これが、現在の「中山間地域直接支払制度」に比べて、石黒のような山間地の農業にとってよりメリットのあるものであるかどうかは分からない。
今まで中山間地域直接支払制度では、石黒は柏崎市内の31の協定地域の内では突出した交付金額(全体の約2割)を受けていたたけに特に注目されるところだ。
いずれにしても、10年後、20年後の日本の農業、故郷石黒の農業は、どのような姿になっているであろうか。
「美しい日本の国づくりを国民とともに目指す」と宣言した庵安倍内閣が、山間地の美しい棚田をないがしろにするわけはないと信じたい。
しかし、過疎化と高齢化が極限まで進みつつある石黒のような地域の農地を保持することは、今の農政のもとでは極めて難しい。
では、どうのような農業政策が望まれるか。
何より、これを「農業政策の一環」としてではく、「国土保全、自然保護」の観点から、独立した国の重要課題として位置づけ、「農地の大規模化、生産性向上」とは切り離して、政府が本気で対応することが肝心なことと思う。いわば、農業政策から農村政策への転換といってもよい。
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石黒のような農地の保全の難しい所には、それに見合った支援がなければ、後継者など望む方に無理があるというものだ。
いわば、国土保全、水源を含めた自然保護等に貢献している僻地の農地の維持管理者には、一律ばらまき型の補助制度ではなく、もっと手厚い安定した直接支払い補助制度が必要だということだ。
もし、直接支払い率が現在の2倍になるならば、状況は大いに変わるであろう。
実際、石黒のような中山間地域の農地を含めた自然の保全は、最近の地球温暖化による異常気象への対処からも、その必要性が高まっていることは明らかである。
とりわけ、石黒地区の棚田が果たしているダム機能には大きなものがあり、その機能が失われたときの下流域の水害の規模は予想をはるかに越えるものになるのではないかと思われる。
さしあたり、「農事組合法人石黒」をはじめ、他の組合、及び地区行政組織と連携して、現行の制度を十二分に活用して一年でも長く、石黒の農地と自然環境維持にあたってほしいものである。
「農事組合法人石黒」が結成されてから、ちょうど今月で丸4年が過ぎた。幸いにも優れた指導者を得て、タキノフチ農地などでの共同作業と月例の勉強会をとおして貴重な実践を積み重ねてきた。
そして、今、国の農政の大きな変革の波を迎えている。この変革が石黒の農業(農地保持・保全)にもたらすメリット、デメリットは未だ分からない。
いずれにせよ、今こそ、農事組合法人石黒が、4年間の実践で得た経験を生かして、石黒の他の組合組織との連携のもとに新しい農業政策を最大限に活用し、更なる発展が得られることを期待したい。
4年前に、「せめて現在の耕作田をこの先10年、そして20年にわたり残したい」という旗を石黒に高々と掲げて組合を立ち上げられたことは、地区住民はいうまでもなく、石黒にゆかりある者にとっても、まことに喜ばしく、心強いことであった。
実際、高齢化により耕作に無理が生じ、農事組合法人に耕作を引き受けてもらう例も何例があったと聞いている。
HP石黒の暮らし編集会も微力であるが、今後も応援していきたい。
どうか、みなさん、健康安全には十分留意されて、取り組んでください。
(HP石黒の昔の暮らし編集会 文責大橋寿一郎)
※勉強不足による誤りも多々あると思われます。これを機会に今後、現在の農政について少し調べてみたいと思っていますが・・・・・特に政権ごとに変わる上に各省連携の仕組みなど複雑で老化が進む筆者の頭脳では理解が難しいですね。(寿)
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