石黒の方言

生 活 編  
2100
音 声
〔Narrator〕
大橋トシヲ
そこのアニはがえ(げぇ)だのう お宅の息子さんは、達者ですね
田に、雀が来ねぇよに かがし立ったら どうだえ 田んぼに、雀が来ないようにかかしを立てたらどうですか
ねら、なんか、えなかがしるなえ きみたち、何か、変なにおいがする
冬の天気のいい日は、エキが光ってかがっぽえのう

      (輝く)
冬の天気のいい日は、雪が光ってまぶしい
かぎさま(かぎんさま)に、ワラを結んで探しもんを すると めっかる ってや

      (鈎・様)
自在鈎に、ワラを結んで捜し物をすると見つかるそうだよ
おらおじさは、今、家でかきもんしてますがね 家のおじいさんは、今、家で文書事務をしていますよ
落とさんよに、かくしに、えれておけや 落とさないように、ポケットに入れておきなさい
ねら、かくれごとしょて きみたち、かくれんぼしようよ
おっか、つけぇに来た子に、へりょかけ かあさん、使いに来た子どもに、駄賃をやれ
つきがけの餅に、ショウヨを つけて喰っても んめぇぞう つきたての餅に、醤油を付けて食べてもおいしいよ
みんじょのかけざから、テノゴを持って来てくれや 台所のかけ竿から、手ぬぐいを持って来てくれよ
でぇの、とこんまのかけじにさわんなや 客間の、床の間の掛け軸に触るなよ
野郎ウサギの いる家に 持ってえって、かけさしてもらって来えや
      
雄ウサギのいる家に、持って行って、交尾させてもらって来なさい
へんめぇに、二三軒かけのぞきして来たえね

      (駆け・覗く)
午前中に、二三軒訪問(短時間の)して来ましたよ
あのセンセは、オレばっかかけてえやだえや あの先生は、ボクばっかり指名していやだよ
オサマ、かこえもんおやしたかえ

      (囲い物)
あんた、冬囲いおやしましたか
内緒だでも、あのジサはかさっかきなんだと
        
      (瘡ー)
内緒ですけど、あのおじいさんは花柳病なんだって
どれ、えたんだ目覚ましを オンに ちっと かさっしゃえ、みてやるすけ
どれ、故障した目覚まし時計を私にちょっとかしてみなさい、みてやりますから
足の傷が、かさっぺたになったすけ、そんま 治るよ
足の傷が、かさぶたになったからすぐに治るよ
この小屋、ちっとかしがってえねぇかえ
この小屋、少し傾いていないかい
きんな、かしょうざきへ えって来たえね
昨日、柏崎に行って来ましたよ
おかげさんでね、かしらっこは 嫁をもらえましたて

      (頭・子)
お陰様でね、一番上の子は嫁をもらいましたよ
あの子ばっかしゃ、かすっこえ子だ あの子ばっかりは、油断のならない子
あら、がせがねぇすけ力仕事は だめだえね あの人は、体力がないから力仕事はだめですよ
じさ、お宮さんの灯籠が えっせにかたがってきたのえ おじいさん、神社の灯籠が大分傾いてきたね
昔は、えちんち ひとかたけでもいいすけ、真っちろな御飯が喰えたかったえね

     (かた・け→喰う)
昔は、一日一食でも良いから真っ白な御飯が食べたかったですよ
用足しに えって来るすけ、えっとき この子をかたってぇて くれや
      (語る)
用足しに行って来るから、この子をしばらく子守りしてくださいよ
んな、オッカかだってえげぇ

      (加わって)
あんた、母さんについて行きなさい
ばか、んな、ぞうりがかたびっこだえや〔だねぇかや〕 ばか、おまえ、草履が左右逆だよ
ヨえ へったら、かだらをよく洗えや

お風呂に入ったら、をよく洗いなさい
ハヨはえねぇかったどもカチカがえとう
ハヤはいなかったけどカジカがいたよ
〔カジカ科の淡水魚〕
ねら、めんなで外へ えってかちこ(かちだま)しょうや

      (勝ち合い)
君たち、みんなで外へ行って固い雪玉を作りぶつけ合って堅さを競う遊びをしようよ
早く しねぇとかちまってしまうえね 早くしないと、固まってしまうよ
おれにかつけて、こすえオツコだ

     (かこつける)
私にかずけて(転嫁して)、ずるい男だ
おまえ、なあ、かぁに喰われた所を、すっけんしてかっこぅじるから、はれるんだてぇ あんたねぇ、蚊に喰われた所を、そんなにしてかきむしるから、はれるんだよ
きょは、日曜だすけ、がっこっこどもは通らんのだがね 今日はも、日曜だから、学校の生徒は通らないのですよ
オッカア、この子は汗でがっしゃがしゃだすけ、きけぇさしてやれや
母さん、この子は汗でびしょびしょだから、着替えさせてやりなさいよ
雨にならんうちにかっせぇでけえりぁっしゃい

      (ー急いて)
雨にならないうちに、急いで帰りなさい
何でも ねぇ時は、マンマに味噌をかって喰うのが一等 んめや

      (古語→カテテ)
何でもない時は、ご飯に味噌をおかずにしてに食べるのが一番美味しいよ
ねら、玉ぶち、おれもかってくれや

      (加えて)
君たち、ビー玉、僕も入れて
歳をとれば、子どもにかってもらわんけら ならんすけない

      (飼って)
歳をとれば、子どもに養ってもらわないと いけないからねえ
おめえ、えっぴょ俵をかつねてこの坂よく上がってきたなえ 君、一俵だわらを担いで、よくもこの坂をあがってきたねぇ
かつぶしでだしをとれや 鰹節で出汁をとりなさいよ
なした、かってぇカボチョだえ なんと、堅いカボチャでしょう
とっつぁ、おさま がえだのぅ、こんげな坂を米一俵かつねて上がって来て 父ちゃん、あんた屈強だねぇ、こんな坂道を米一俵(約65s)担いで上がって来て
ねら、おが手袋、かてぇっぽぅどごへやったや おまえたち、私の手袋、片方どこへやったの
おじさ、かどくりさして もらわんすけ、ソウソと えって くんなせぇ おじさん、門送りさせてもらいませんが、気をつけてお帰りください
ようこときいてるとかどての下駄屋が来たら、ネェラにも盆下駄を買ってくれるぞ 言うことを聞いて手伝いをしていると門出〔高柳町の集落〕の下駄屋が来たら、あんたたちにもお盆用の下駄を買ってやるよ
アニや、かどにわのエキだけでも掘って おえてくれや

      (門庭)
セガレや、庭先の雪だけでも掘っておいてくれよ
この水は、ちっとかなくせぇなえ この水は、少し金気臭いがするね
しいわさしると、かなへばしてたったくぞ 火いたずらをすると、鉄製の火箸でたたくぞ
ねら、かなもんを外へおっぱなしておくなや、しゃびるぞ おまえたち、金物を外へおきっぱなしにしておくなよ、錆びるよ
きっと、そえがんだがな きっと、そういうのですよ
ツケモンの重しに するすけ、川へ えってかな石を へろって来てくれや

      (金ー)
漬け物の重しにするから、川へ行って安山岩・玄武岩を拾って来てくれよ
ほぉんに、あのバサ、かなきんかになって なえ ほんとに、あのオバアサン、重症の難聴になったね

なんでぇら、うすら難儀くてかなん(かなねぇてぇ なんだか、少しだるくてかなわないですよ
そんげぇながながなしたカダラで、百姓なんか出来るもんか そんな弱々しい体で、百姓なんかできるものか
このえしの下に、でっけぇがにがえたぞ この石の下に、おおきがいるよ
ネェラ、ほら、みろぉ、でっけえぇかねっこりがさがってらぁ

(@金・氷A鐘乳)
君たち、ほら、大きなつららが下がっているよ
きょは、へんまっから雨んなるげ だすけかぶりもん持って えげや

      (被り物)
今日は、午後から雨になるらしいから雨具を持って行きなさい
こどし のエネは、かべ刈ったなえ

      (古語→加部)
今年の稲は、束(藁量)がたくさんあったね
この子は、時々 でっけぇかまおこすんがんだえね この子は、時々大泣き(ヒステリックに泣く)をするのですよ
かみすり、どごへやったろうなえ かみそり、どこへやっただろうね
かめにひびを入れて、今酒を止めてえるがんそう

内臓を悪くして、今酒を止めているのですよ
アニ、この茅ッかぶつを 堀り起こしてくれや

せがれ、このカヤ株を掘り起こしてくれよ
くせぇになるから、かまえつけんな くせになるから、ほおっておきなさい
かまうなて、泣くから
からかうなて、泣くから
オッカサ、かまんで くんなせぇ
奥さん、構わないで(接待に)ください
ハダケは、荒らして2年も すれば かやわらになるがね 畑は、荒らして2年もすれば茅原になりますよ
セータを、ふぐすすけ、おめぇ、毛糸を棒にからげぇてくんねぇか セーターをほぐすから、あんた、毛糸を棒に巻いてくれないか
からすがえりがして、いてぇかっとう

  (カラスの歩き方から)
からすなえり(こむらがえり)がして、痛かったよ
川流れした子が、未だ あがらんすけ、からだみをしてもらう事にしましたてぇ 川で溺れ行方不明の子の遺体が、あがりませんので空荼毘をしてもらう事にしましたて
おら嫁も、からまる子どもが えなくなった すけ この頃、山仕事をしてくれるえね 家の嫁も、まつわりつく子どもが居なくなった〔成長したから〕から、この頃、田畑の仕事をしてくれますよ
そんじゃ、からあしだったのう それじゃ無駄足でしたね
あえたぁたたぁ、からすがへえった あいたたた、こむら返りになった
なんだか、きょは、カラスなきがわりなえ なんだか、今日は、カラス鳴きがわるい

〔カラス鳴きがわるいと人が死ぬなど不吉な事が起こる前兆とされた〕
ばか、からみでけぇらんで山羊の草でも刈っていげや ばか、手ぶらで帰らないで山羊の〔餌の〕草でも刈って〔背負って〕行きなさい
えっせな カンナリが鳴ったでも、からようだちだったのう

      (空・夕立)
すごい雷が鳴ったけど、雨の降らない夕立だったね
このケヤキは、中ががらんこだえね

このケヤキは、中が空洞ですよ
かりもんを、けぇしに えってくらぁ
借り物を、返しに行って来ますね

こどしゃ、エエの裏のかれんぼこを切って たきもんに しょて

今年は、家の裏の枯木を切って薪にしましょうよ
こらぁ、あこの家からかれて来たんだえね これは、あそこの家から借りて来たのだよ
そんげぇに、かろっぽしねぇことを えうんじゃねぇて そんなに、軽々しいことを言うんじゃないよ
昔は、めぇとしのように春先は、子どもの川流れがあったモンだこてぇ

昔は、毎年のように春先は、子どもの川での水死があったものだよ
エキ棚の下に干したシメがガワガワに凍ったぞ 雪棚の下に干したオシメがバリバリに凍ったよ
節句にはかわりもんをして食べよっそ 節句には、普段と違うご馳走をして食べようよ
この子の袖みやっしゃいの、鼻でがわんがわんしてえるがんぜぇ この子の襟、見てくださいよ、鼻で厚紙のように固まってるのですよ
おめぇ、なんで来なかったがん あんた、なんで来なかったの〔ですか〕
おら、リンゴまるがん喰えてぇ ぼく、リンゴまるごと食べたい
店んしょ、この袋に百円がん えれて くれね〔くらさい〕 お店の方、この袋に百円入れてくださいよ
おじさ、また、とうきょへいぎゃったがんかえ おじいさん、また、東京へ行きなさったのですか
ねら、かんがら〔かんかん〕はぶちゃらんで、えんのしたへえれておけや あんたがた、空き缶は捨てないで、縁の下に入れておきなさいよ
山あすびに、えっても ええががんくろに えっちゃ ならんぞ 山遊びに、行ってもいいがに行ってはならないよ
ここで、ンマが がんくろおちしたんだ ってや

      (崖・畔)
ここで、馬が崖に転落したんだそうだよ
おめえは、未だかんげぇが あせぇなえ 君は、未だ考えが浅いね
わりかった、かんしてくんなさえぇ
      (勘して)
悪かった、許してください
何だか、それじゃかんじょがわりぃようだなえ

      (勘定 →考慮)
何だか、それじゃつじつまが合わないようだねぇ

きんなより、きょはかんじるのし

      (寒)
昨日より、今日は寒さが厳しいですね
あんまり草が えっせ なんだんが、今朝 ちゃめに えってかんなぐって来ましたてぇ あんまり雑草がたくさん生えたんで今朝ご飯前に行って刈り倒して来ましたよ
ねら、かんなりが鳴りだしたすけ、ようだち が来るぞ

あんた方、が鳴り出したから、夕立がくるよ
城山の てんじょへ、えっせなかんなりぐもが出たなえ
城山の上に、すごく大きな雷雲が出たね
ねら、正月だってがんに、風邪しくな

おまえ達、正月だというのに、風邪引くな
らえんなは、えっぺぇかんのを おこしてソバ播くぞ   

      (刈野)
来年は、たくさん焼き畑をしてソバ播くぞ
ヨが わぇたかかんもして見てくれや 風呂が沸いたか、かき回して見てくれよ
だえかん だってがんだすけだども、まえんち、さぶえのう 大寒だとはいえ、毎日寒いですね